アパレルブランドCLOUDYと三菱鉛筆、カカオ殻を鉛筆に

記事のポイント


  1. アパレルブランドCLOUDYは三菱鉛筆と「CHOCOPENプロジェクト」を始めた
  2. ガーナで廃棄されたカカオの殻を使い、「カカオ鉛筆」を作った
  3. 「カカオ鉛筆」を1本購入するとガーナの子どもに1本寄付へ

アパレルブランドCLOUDY(クラウディ)はこのほど、三菱鉛筆と組んで、「カカオ鉛筆」を通して西アフリカ・ガーナの課題の普及啓発を始めた。アフリカンテイストのアイテムを展開するクラウディはガーナの教育支援にも取り組んできた。今回の取り組みはその一環で、現地での雇用創出とゴミの削減にもつなげる。(オルタナ総研=金子愛子)

クラウディはアフリカの民族柄や特産品を使ったファッションブランドだ。アフリカでの女性雇用の創出を目的としたブランドで、ガーナに自社工場を構え700人を雇用している。このブランドの特徴は営利と非営利を分けて事業を運営している点にある。

ブランドの運営は、事業会社のDOYAが行い、その事業で得た収益を生かし、現地での雇用や教育、健康支援に取り組む。これらの活動を行う主体は、特定非営利活動法人CLOUDYだ。

CLOUDYでは、ガーナの自社工場の運営に加えて、学校建設にも取り組む。2025年には8校目の学校を建設予定だ。DOYAの銅冶勇人社長は特定非営利活動法人CLOUDYの代表理事も務める。

銅冶社長はアパレル未経験で、金融業界出身だ。ゴールドマン・サックス在籍中の2010年に特定非営利活動法人Doooooooo(現CLOUDY)を設立。ゴールドマン・サックスを退社した翌年2015年にDOYAを立ち上げた。固定概念に縛られないアイデアで社会課題の解決を目指す。

■カカオ殻はマラリアの感染源にも

今回、クラウディが三菱鉛筆と始めた取り組みの名称は、「CHOCOPEN プロジェクト」だ。カカオの産地であるガーナでは、道端に廃棄された大量の「カカオの殻」が問題になっている。

実際にガーナで捨てられているカカオの殻
実際にガーナで捨てられているカカオの殻

カカオの殻を放置することで蚊が蔓延し、マラリアの感染リスクを高めている。さらに、地球温暖化の要因であるメタンの排出にもつながっているという。メタンの温室効果は二酸化炭素の約25倍だ。

今回のプロジェクトでは、カカオの殻を回収し、鉛筆の素材として有効活用した。カカオ鉛筆はカカオを乾燥・粉砕し、つなぎを入れ練って成形する。1つのカカオ殻から15~20本の鉛筆ができ、1日数百本を製造する。現地の製造工場に2人雇用し、今後も現地での雇用創出を目指す。

■カカオ鉛筆1本の購入で1本寄付に

5月2日から5月11日まで、UNKNOWN HARAJUKU(アンノン原宿)で「ゴミと鉛筆とアート展」を開いている。同展では、カカオ鉛筆を使ったアートを並べた。

現代美術のアーティストの作品は、会場で購入できる。売上高の一部は、ガーナの子どもたちの教育支援に寄付になる。会場内に設けた白い壁には、カカオ鉛筆を使って誰でも自由にアートを描くことができる。

会場でカカオ鉛筆の販売も行う。価格は1本330円(税込)。1本購入すると、文房具が行き届いていないガーナの子どもたちに1本寄付される仕組みだ。カカオ鉛筆はCLOUDYの店舗でも購入ができる。

カカオ鉛筆を握る子ども
カカオ鉛筆を握る子ども

■「このゴミを生んだのは私たち」

クラウディは5月2日、CHOCOPEN プロジェクトの立ち上げを記念して、セミナーを開いた。銅冶社長は、ガーナで廃棄されたカカオ殻について、「このゴミを生んでいるのは私たちだ」と指摘した。

トークイベントの様子。左からジャーナリストの堀潤氏、三菱鉛筆の数原社長、CLOUDYの銅冶社長
トークイベントの様子。左からジャーナリストの堀潤氏、三菱鉛筆の数原社長、CLOUDYの銅冶社長

ガーナはカカオの生産地だが、現地のカカオ農家の多くは、チョコレートを見たことも食べたこともないという。

「チョコレートを食べている我々は消費に伴う責任を見直す必要がある」と銅冶社長は語気を強めた。

カカオ鉛筆を作った経緯をこう話した。銅冶社長がガーナで最初に学校を建設した時、子どもたちに夢を聞いた。300人いたが、夢の種類は4つだけだった。

教育が不十分なことで、選択肢を狭めていたのだ。このプロジェクトを通して、子どもたちが夢を沢山描けるような未来に変えたいと話した。

■三菱鉛筆社長「できない理由より、できる方法を考えた」

登壇した三菱鉛筆の数原滋彦社長は、銅冶社長の熱い思いを聞きプロジェクトへの参加を決めた。当初、社員はカカオの殻を使った鉛筆づくりは難しいという反応だった。折れや、均質性に課題があった。

だが、できない理由を考えるのは簡単だが、それでは前に進まない。できる方法を考えようとマインドを切り替え、社員が現地に何度も足を運び、試行錯誤の上で鉛筆を開発した。

ボールペンなどでプラスチック素材を多く使う筆記具メーカーは、リサイクルプラスチックなどに早くから取り組んでいた。業界として環境問題への関心度は高かった。

しかし、今回「鉛筆」にメスを入れてくれたのは、「頭を殴られたようなインパクトだった」と数原社長は明かした。

「ゴミと鉛筆とアート展」 開催概要
開催期間: 2025年5月2日(金) 〜5月11日(日)
開催時間: 2025年5月2日(金) 14:00 ~18:00、5月3日(土)〜5月11日(日) 11:00 ~19:00
会場: UNKNOWN HARAJUKU(アンノン原宿)内イベントスペース
入場料: 無料
協力: ANOMALY / COHJU contemporary art / ギャラリー小柳 / KOTARO NUKAGA / MAHO KUBOTA GALLERY / MAKI Gallery / nichido contemporary art / Yutaka Kikutake Gallery
本イベントに協力したアーティスト(順不同)
森本啓太(KOTARO NUKAGA)/ 友沢こたお / 大和美緒(COHJU contemporary art)/ 熊谷亜莉沙(ギャラリー小柳)/ 古武家賢太郎(MAHO KUBOTA GALLERY )/ Atsushi Kaga(MAHO KUBOTA GALLERY )/ 三瓶玲奈(Yutaka Kikutake Gallery)/今西真也(nichido contemporary art)/ 山本亜由夢(MAKI Gallery)/ ユーイチロー・E・タムラ(KOTARO NUKAGA)/ 井上七海(KOTARO NUKAGA)/ 小林万里子(KOTARO NUKAGA)/ 松川朋奈(KOTARO NUKAGA)/ 川井雄仁 (KOTARO NUKAGA)/ 木津本麗(KOTARO NUKAGA)/ マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー(KOTARO NUKAGA)/ 寺本明志 / 熊野海 / 飯川雄大 / 川村摩那 / 品川美香 / 南依岐 / 米村優人 / 三浦光雅 / 東慎也(COHJU contemporary art)/ 小左誠一郎(Yutaka Kikutake Gallery)/ 金田実生(ANOMALY)/ 津上みゆき(ANOMALY)/ 淺井裕介(ANOMALY)/ 潘逸舟(ANOMALY)
ガーナから参加するアーティスト
Edmund Boateng / George Ohene Gyamfi / Desmond Agbenyo Dawfor / Emmanuel Fynn / Simson Ackah/ Francis Quainoo Ackah/ Francis Quainoo

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