社会のニーズにいち早く取り組む「アウトサイド・イン」とは

記事のポイント


  1. 気候変動や人権、戦争など社会課題は深刻でSDGsの達成には更なる努力必要に
  2. SDGs達成へ企業は社会的ニーズにいち早く取り組む「アウトサイド・イン」が重要だ 
  3. これまでの顧客の先にある社会に目を向けることで新たな事業創造が可能に

オルタナは6月18日、サステナ経営塾21期第3回を開いた。第3講・第4講では、SDGsアウトサイド・インについてのワークショップを開いた。冒頭、オルタナ代表取締役の森摂が登壇し、「社会のニーズに対して同業他社より早く取り組むことで企業は新たな事業創造が可能となり、社会課題の解決も可能となる」と強調した。講義レポートの全文は以下の通り。(オルタナ編集部=萩原 哲郎) 

■SDGs達成へ企業は社会的ニーズから事業創造を

SDGsのSD(サステナブル・ディベロップメント)が世界で最初に使われたのは、1987年の国連ブルントラント委員会です。そこで「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」とされました。 

しかし、「開発」という訳が適切かは議論があります。森林伐採などを行うような「開発」ではなく健全な発展が求められているので、「発展」という意味で考えるべきでしょう。 

2024年の中間報告をみると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックやウクライナ戦争、そしてその後にはイスラエルによるガザ紛争やイラン空爆などが、それぞれの健全な社会課題解決を妨げています。 

20世紀は戦争の世紀で、21世紀は平和の世紀になると期待されていました。しかし、ここ数年で戦争が頻発しています。ロシアのウクライナ侵攻が大きなきっかけとなり、20世紀には世界最大の人権侵害の被害国であったユダヤ系の人たちが、21世紀にはイスラエルという国としてパレスチナやイランの人たちを殺戮しているという皮肉な状況が起きています。 

気候変動だけでなく人権や戦争、感染症、飢餓貧困など様々な社会課題がありますが、私たちは今まで以上の努力をしていかないとSDGsの目標達成は極めて難しくなっています。 

しかし、私たちは叡智を持った人類として、企業として、社会的な存在として社会課題解決の手を緩めてはなりません。そのためのプロセスには様々あると思いますが、そのひとつがアウトサイド・インです。 

アウトサイド・インはダブルマテリアリティの考え方です。シングルマテリアリティは財務に対するインパクトである一方、ダブルマテリアリティは財務に加えて社会・環境に対するインパクトのことです。企業の視点としては社会課題解決と同時に財務の改善も見込めるアプローチであり、成長戦略となります。 

アウトサイド・インとは、社会のニーズに応える手法のことです。企業の周りに顧客やマーケットがあり、従来の手法であればプロダクトアウトかマーケット・インが主流です。そのベクトルを少し伸ばすと、顧客市場の先にある社会が見えてくる。社会のニーズに対して同業他社より早く取り組むことによって、企業は新たな事業創造が可能となり、その事業でもって社会課題の解決が可能となります。 

アウトサイド・インの事例で興味深いのは18世紀後半の事例です。たとえばユニリーバや花王を挙げると、19世紀は衛生環境や栄養が悪かったのですが、その社会課題解決に向けて石けんやベビーフードを開発しました。これらの企業は現在でもグローバル企業として活動しています。 

もうひとつ注目したいのはオムロンのアウトサイドイン事例です。同社のOur Valuesという価値観のなかで、創業時から受け継がれている「ソーシャルニーズの創造」という言葉がある。社会のニーズを先んじて解決することで、事業創造ができるということを組み込んでいます。 

実際にオムロンは世界初・日本初の製品を開発していて、家庭用血圧測定器や無人駅システムなどを開発し、社会ニーズに応えてきました。血圧測定器を例にとれば、開発以前は病院に行かなければ血圧を測れなかったのですが、この製品の誕生によって家庭でも測れるようになりました。 

(この続きは)
■地域課題から未来のニーズまで意欲的なアイデアを議論
■既存事業から「社会のニーズ」を先取りするビジネスを創造へ
■地域の課題解決へ自社の人的リソースを生かす
■働きやすさやウェルビーイング追求する取り組みも

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2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #サステナビリティ

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