記事のポイント
- ピジョンの哺乳びんが、アフリカの地・ケニアで「赤ちゃんが選ぶ製品」として話題だ
- 単身赴任した日本人女性が、製品だけでなく母乳育児の正しい知識の普及にも力を入れる
- 赤ちゃんの命や成長に関わる製品だけに、高価格帯でも好調な売れ行きだ
ピジョンの哺乳びんが、初進出のアフリカ・ケニアの地で、「赤ちゃんが選ぶ製品」として話題だ。赤ちゃんが哺乳びんでミルクを飲んでくれない経験をした人たちにとって、哺乳びんは命や成長に関わる製品だ。そのため、ピジョン製は高価格帯でも好調な売れ行きだ。日本から単身赴任した現地法人社長は、製品だけでなく母乳育児の正しい知識の普及にも注力することで、ケニア母子のウェルビーイングに貢献したいと話す。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

■アフリカの地で母子のウェルビーイングに
育児用品大手のピジョンは2023年末にアフリカ大陸に初進出し、ケニア・ナイロビに現地法人を開設した。
太田里絵社長は、「社内でアフリカ進出の事業計画を描いたのは自分だ。だから自分が行きたい」と手を挙げ、現地に単身赴任した。
太田さんはオルタナの取材に対し、「ケニアに来て、哺乳びんでミルクを飲めない赤ちゃんがこんなにたくさんいるということにまず驚いた。だからこそ、ピジョンの製品をこの国に届けていくことに価値がある」と話す。
ピジョンは、赤ちゃんが母乳を飲むときの舌の動きなどを60年超にわたって研究を続けてきた。外観を観察するだけではわからない口腔内の哺乳運動を、哺乳を阻害しない口腔内観察カメラや超音波診断装置、母乳を搾り出す圧力の測定装置などを使って可視化する研究観察技術も磨いてきた。
それら研究をもとに開発した哺乳器「母乳実感」はロングヒット商品となり、哺乳器(哺乳びん・乳首)では日本では8割超、中国でも4割超と圧倒的なトップシェアを有する。また低体重で生まれた赤ちゃんや口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)などの疾患で、吸う力の弱い赤ちゃんに合わせた哺乳器にも研究を活かしている。
太田さんは、「日本だと、赤ちゃんが哺乳びんで飲めないという話はほとんど聞かなかった。それだけにアフリカでは、本業が母子のウェルビーイングに直結していることをより強く感じる」と力を込める。

■「ピジョン製品は違う」と赤ちゃんが教える
ケニアでは政府が強力に母乳育児を推奨しており、粉ミルク製品の広告も禁止されている。同国はシングルマザーの比率が約3分の1と高く、共働き世帯も多い。乳幼児を持つママたちのほとんどが、仕事をしながら授乳も続けている状況だ。
ケニアではナニー(乳幼児の世話・教育を専門とする仕事の人)文化が根強く、富裕層だけでなく中流家庭でも、日中は乳幼児をナニーに預けて働くことが多い。ママが搾乳した母乳を、ナニーなどの第三者が哺乳びんを使って飲ませるときに、「赤ちゃんが哺乳びんで飲んでくれない」という困りごとが発生する。
「市場にはたくさん哺乳びんがある。しかし、品質基準は必ずしも高くない。赤ちゃんが哺乳びんで飲んでくれないという悩みを抱え、さまざまなカスタマージャーニーを経て、当社にたどり着いた人たちから、『ピジョンの哺乳びんにしたら赤ちゃんが飲んでくれた』との感謝の声がたくさん寄せられている」と太田さんは話す。
ピジョン製品が、初進出のアフリカの地で最初に広がりを見せたのは、困りごとが解決した経験者たちからの口コミがきっかけだった。
「商品の違いを説明してもピンと来ない様子だった小売店オーナーが、後日、ピジョン製品を置きたいと連絡してくる。『赤ちゃんは商品の違いがわかる』というママたちの実体験が、小売店オーナーの耳に届いた」という。
ケニアの現地法人では、太田さんとともに、カスタマーサポートを担当する現地スタッフが、メッセージアプリWhatsAppに入ってくる問い合わせや注文に返信・対応する。なかには、赤ちゃんが母乳を飲めていない切羽詰まった状況の中で、「今日中に届けて欲しい」との依頼が届くことも少なくないという。
■命に関わる製品は、高価格帯でも売れる
■「母乳育児のためのTIPS」発信にも力を注ぐ
■法改正で、ケニアではオフィスでの授乳室設置が義務に

