記事のポイント
- 西武信用金庫が、「ソーシャルインパクトギャザリング」を発足した
- 社会課題の解決を目指す起業家や投資家が協創するプラットフォームだ
- 資金提供にとどまらず、「相互扶助」の場づくりを目指す
西武信用金庫(東京・中野)は4月20日、社会課題の解決を目指す起業家や投資家が協創するプラットフォーム「ソーシャルインパクトギャザリング」を発足した 。同金庫は、ソーシャルスタートアップや、地域に根差した「ローカルゼブラ企業」の支援に注力する方針だ 。発足イベントでは、行政や民間支援機関を交えたパネルディスカッションを行い、地域金融における新たなインパクト創出の在り方を提示した。(オルタナ総研事務局長・金子愛子)
西武信用金庫の髙橋一朗理事長は、大きく転換してきた同金庫の取り組みについて語った。預金を集める経営から、取引先の売上と利益を伸ばす支援へ軸足を移した。その結果、顧客の約7割が黒字となり、不良債権比率も低く抑えた。
さらにスタートアップへの投資にも早くから取り組んだ。これまで170社に出資し、複数の企業がIPO(新規公開株)に至った。NPO向け融資や事務所の貸し出しも進め、地域の公共サービスの不足を補ってきた。髙橋理事長はこれらの取り組みを「ソーシャルインパクト」と位置付ける。

左から西武信用金庫の髙橋一朗理事長、タリキの中村多伽代表取締役CEO、中小企業庁の伊奈友子経営支援部商業課長、ゼブラ アンド カンパニーの阿座上陽平代表取締役
■地域が豊かになれば地域金融も成長する
パネルディスカッションでは、地域金融の新たな役割について議論した。
起業家の育成やインパクト投資を行うタリキ(京都市)の中村多伽代表取締役CEOは、「社会課題はすべての経済プレイヤーが取り組むべき領域」と指摘する。西武信金との連携について、「地域が豊かになれば地域金融も成長する好循環が生まれる」と話す。
中小企業庁の伊奈友子経営支援部商業課長は、ローカルゼブラ企業の重要性を強調した。「売り上げや利益だけでなく、社会への価値創出で企業を評価する時代に入った。地域の中で人材や資金が循環する仕組みづくりが課題だ」と語った。
ゼブラ アンド カンパニー(東京・港)の阿座上陽平代表取締役は、地域金融の役割の拡張を求めた。「資金だけでなく、信用やネットワークも総動員しなければ地域は成長しない」と言う。
■1%を長期投資に回せば、2兆円規模の資金が生まれる
従来のベンチャー投資は、10年程度での回収を前提とする。一方、社会課題の解決には長期資金が必要だ。中小企業庁の伊奈課長は、地域住民が株式を持つ仕組みや、エグジットに依存しない資金モデルの検討が必要だと指摘する。
政府もインパクト投融資の拡大を進める方針だ。髙橋理事長は、信用金庫がファンドを持つ重要性を強調した。全国の信用金庫が預金の1%を長期投資に回せば、2兆円規模の資金が生まれると試算する。
髙橋理事長は最後に、ソーシャルに取り組む意味を「人づくり」と語った。NPOや社会課題の現場と関わることで、職員の価値観が変わるという。「私は、社員を幸せにする責任がある。今あるものを大事にできる優しい職員が増えていくことで、地域に必要とされる金融機関につながるはずだ」(髙橋理事長)。
イベント当日は、ソーシャルスタートアップやVC企業、行政など101団体107人が集まり、交流を深めた。



