タイ・バンコクの流行発信地サイアム地区で、2025年11月に持続可能な未来都市をテーマにした体験型商業施設「ネクストピア」が開業した。海洋ごみを活用したアート展示のほか、環境配慮型の小売店・飲食店などが集積する。タイ企業のESG意識が高まる中、観光都市バンコクから「より良い世界をつくるコミュニティー」の形成を目指している。(バンコク・京正裕之)

ネクストピアは、若者や外国人観光客が訪れるショッピングエリアとして知られる、首都圏鉄道「BTS」のサイアム駅前にある商業施設「サイアム・パラゴン」の5階に位置する。
バンコクを中心に商業施設開発を手がけるタイ大手サイアム・ピワットが、国内外の50の企業・団体、30の地元コミュニティーと共同開発した。延べ床面積は1万5,000平方メートルで、総事業費は8億5,000万バーツ(約41億円)。同社は2050年までのネットゼロ達成などのESG目標を掲げており、「持続可能な都市のプロトタイプ」を提示することが狙いだという。

入場料は無料。館内に入ると、廃材と海洋ごみとなった漁網で作ったオブジェや、使用済みの衣類で制作したマスコットなどのアート展示が来場者を出迎える。タイ語と英語による約30分の館内ツアーも用意され、さまざまな仕掛けを知ることができる。
天井からつるされた地球を模した球体スクリーンや、高さ16メートルの人工滝が未来都市を思わせる空間を演出する。人工滝は自然の冷却効果を活用して館内温度を下げる役割も担う。
体験型の設備としては、自分で収穫して持ち帰れる植物工場や、歩行の圧力で発電する「床発電」、自転車型の人力発電装置、人工知能(AI)搭載カメラでごみを自動判別するごみ箱などを備える。
館内の一部電力は太陽光発電で賄っている。空調にはパートナー企業として参画するダイキン工業の高効率空調システムが採用されている。
■体験を対話のきっかけに
サイアム・ピワットは、2025年の売上高が約390億バーツの業界大手で、もともと中小零細企業が生産する伝統工芸や地方産品を取り扱う「共創型開発」を企業価値としてきた。近年は、エシカルやリサイクル素材の雑貨を扱う専門店「エコトピア」を展開するなど、ESGの事業領域を広げている。
ネクストピアの小売店ゾーンでは、このエコトピアが中核テナントだ。飲食店ゾーンでは、視覚障がいのある人が働く「Dots Coffee」や、地元産食材を使うフライドチキン店「Henryfry」などが入る。フロアガイドブックは、各テナントを5つの評価軸(地元食材、ウェルネス、エシカル素材、環境負荷抑制、ソーシャルインパクト)で紹介している。
サイアム・ピワットは、タイで依然として主流となっている廃棄物の埋め立て処分を2040年までにゼロとする目標も掲げ、各テナントもこれに賛同しているという。
ネクストピアのツアーガイドの男性は「外国人観光客も多く訪れている。ここでの体験を、より良い世界とは何かを話し合うきっかけにしてほしい」と話している。



