コンセプト×ハード×ソフトで魅力的なCSR 戦略を【戦略経営としてのCSR】

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大久保 和孝(新日本有限責任監査法人CSR推進部長)

CSRへの取り組みが企業価値に結びつきにくいのはなぜか。例えば、わが国でも過疎化問題の解決策としての地域の活性化は重要な社会課題の一つとなっている。地域の活性化を成功させるカギは、如何にコンセプトをデザインできるかにある。豊かな自然やおいしい農産物は日本全国どこにでもある。その中で、差別化し、付加価値を出し、観光客を引き付けるためには、コンセプトを明確にし、伝えることだ。

企業のCSR への取り組みも同じだ。社会貢献への取り組み自体は評価できるが、必ずしも企業価値や同業他社との差別化には繋がっていない。その主な理由は、CSR 戦略上のコンセプト(コトづくり)が明確になっておらず、各種の取り組みが散発的に受け止められてしまい、ステークホルダーにメッセージが伝わりにくいことにある。

仮に報告書などで、多くの社会貢献活動への取り組みを提示しても、「凄いな」という印象は持たれるが、「この会社は何なのだろうか」という点の印象は残らず、魅了されにくいことからブランドとして定着しない。すなわち、ハード(資金)とソフト(社会貢献)が有機的に紐づいていない。

遊園地を例に考えると、最新の絶叫マシンというハードだけでは恒常的に多くの人を集められないのに対し、ディズニーランドでは、遊覧するだけのアトラクションですら、長蛇の列ができる。この違いは、コンセプトの有無に尽きる。人々を魅了し、企業価値向上につなげるにはコンセプトが重要だ。

CSR戦略はコンセプトを活かすための方策

CSR戦略における企業価値は、コンセプト×ハード×ソフト(アイデア)の3 要素で決まる。

例えば、コンセプトがないまま、ハードとソフトだけでバラバラに取り組んでも、ステークホルダーには企業の意図が伝わらず、ブランドにならない。コンセプトを明示し、それを活かすためのハードとソフトの組み合わせを考えることで、企業としてのメッセージが一貫し、明確になり、企業ブランド、企業価値へと繋がる。コンセプトに関係無く、目先のことや著名なNPO などに散発的な支援を行っても、単なる社会貢献としての取り組みでしかない。コンセプトに基づいて、所与のハード(資金やノウハウ)を前提に、ソフト(社会貢献)の在り方を考えることで、企業価値に繋げられる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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