復興に必要なのは、コンテンツではなく「コンセプト」【戦略経営としてのCSR】

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例えば、単なる漁業体験は再訪のきっかけにならない。しかし、漁師や海女さんの考え方や生き方(それこそが地域に根付くコンセプトである)に魅了された、地域のファンを作れば、観光客として定着する。世界的に成功しているニュージーランドのツーリズムも、コンテンツではなくコンセプトを売りにしている。クジラが見えることよりも、その地域が如何にクジラと共存共生してきたのかという地域の考え方の説明に力点を置く。ホエールウォッチングというコンテンツではなく、その地域の生き方・考え方というストーリーに魅了され、多くのリピーターが来るようになり、長期的・持続的な関係が構築される。

プロデュース力のある人材が社会を変える

それらを実践していくためには、地域をプロデュースできる人材が必要だ。日本では地域をゼロから作り直した経験のある人はいない。地域のコンセプトを作り直し、産官学の連携を図りながら具体的なプロジェクトを生み出すことのできるプロデュース力のある人材が求められる。価値観が複雑な社会では、唯一の解決策を示すことはできない。住民自らが、課題を自分事として考え、現状や課題を繋ぎ合わせて地域の人々と共に解決策を模索していくよう、人々の意識を変える「場作り」と「仕組み」のプロデュースが期待される。

企業のCSRへの取り組みも同様だ。他社と比較したコンテンツ競争は担当者の自己満足は高めても読者の興味・関心を引きはしない。ステークホルダーダイアログで重要なことは、課題を共有し、共に解決策を模索していく「場作り」と「仕組み」のプロデュースである。共通課題をもとにステークホルダーを巻き込むことで、強い関係を構築し、結果としてブランド価値を高め持続的成長へと繋がる。この考え方は社内研修でも同じだ。一方的な座学による研修では受講者が知識やテーマを自分事化できないことが多い。与えられたテーマを自分事化させていくためには、考える「場づくり」と「仕組み」をプロデュースすることが求められる。これまでのように、教える側と教わる側といった単純な形式ではなく、課題を自分事化させるためのプロデュース力が人材育成の効果に影響する。企業の人材育成のあり方も変わってきている。

【おおくぼ・かずたか】新日本有限責任監査法人シニアパートナー(公認会計士)。新日本サステナビリティ株式会社常務取締役。慶応義塾大学法学部卒業。教員の資質向上・教育制度あり方検討会議委員(長野県)。大阪府特別参与。京丹後市専門委員(政策企画委員)。福澤諭吉記念文明塾アドバイザー(慶應義塾大学)。公的研究費の適正な管理・監査に関する有識者会議委員。京都大学・早稲田大学等の非常勤講師。公共サービス改革分科会委員(内閣府)ほか。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第10号(2013年7月5日発行)」から転載しました)

大久保 和孝氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

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2014年8月14日(木)11:38

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