エコ賃貸を始めてみたが、エコビジネスは難しい。(3)

エコ賃貸をどのようにして引き合うものにするか

前回のこのコラムでは、エコ賃貸の住まい手に生じる利益を見た。住み手に生じるお得は分かったとして、それでは、オーナーの方のお財布的にはエコ賃貸を供給できるのだろうか。(慶應義塾大学教授=小林光)

■ 初期投資の高い賃貸は経済的には引き合うか

ここに、我がエコ賃貸、羽根木テラスBIOのチャレンジがある。

実は今回のエコ賃貸の建設コストの、通常の物件に比べた増は、2軒で合計500万円位であった。仮にこの追加投資は、単純利回り10 %のスピードで回収されないとならないとすると、1軒の月間賃料には、2万円もの跳ね返りが生じる。これでは、住み手に生じる利益をすべてオーナーが奪い取ってしまって、売り手と住み手のウィンウィンのディールは成り立たないであろう。

そこで考えた。仮に、エコ賃貸に住み手が入ってくれると、その住み手は、健康で過ごすので、賃料が払えないデフォルトになる可能性は低いから、商売のリスクが低くなる。

さらに、光熱費が安いので、住み替えをせずに長く借りてくれるかもしれないし、仮に、転居するにしても、エコ賃貸のメリットが十分宣伝できていれば次のお客さんもすぐに入居しよう、そして、良い評判ができていれば、他の物件と同じように築年数に応じた賃料引き下げをする、ということは回避できるかもしれない。このように考えると、エコ賃貸は、オーナーにとっても得のある物件である。

実際、北九州には、太陽光発電に絞ったエコ賃貸とエコ分譲マンション、具体的には、各戸宛に1.5kWの太陽光パネルを必ず使えるようにした集合住宅「ガイア」があって、結構な人気を博している。論者もヒアリングに行ったことがあるが、そのオーナーであり、建築主である芝浦ホールディングスでは、この設備は、お客様を確実に確保する上で十分引き合う投資であると述べていた。

hikaru

小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる

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