社会課題を解決するための新しいマンションコミュニティ [荒 昌史]

■ よりよいご近所のつながり―地縁のあり方とは?

年末年始に、自治会や町内会でクリスマスパーティーや餅つきを行ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、年始に紙屋高雪さんの著書『町内会は義務ですか?』(小学館、2014)を拝読したところ、一般市民を対象に調査した自治会加入率は全国平均で2012年に24.7%と、2003年の約60%弱から減少の一途を辿っているとのデータが記載されていました(財団法人明るい選挙推進協会「選挙の意識調査」より)。加入していても加入意識がない方々も多いため、正確な加入率かはわからないそうですが、減少しているのは確実でしょう。

一方で、下記の表にもあるように、近年は単身・DINKS世帯が増加し、それに伴ってマンションを始めとする共同住宅は年々増えています。

(図:HITOTOWA公式HPより)
(図:HITOTOWA公式HPより)

町内会の加入率は下がっています。一方で、共同住宅に暮らす人は増えています。今後さらに戸建ではなく共同住宅を選ぶことが多い単身・DINKSが増加するため、共同住宅に住む人はますます増えていくと予想できます。

このような背景を踏まえ、共同住宅を基軸とした新しい地縁のあり方をつくろうとチャレンジをしています。

なぜなら、防災減災以外にも、都市には孤独な子育て、独居老人の増加、大きな環境負荷といった社会課題があり、これらを解決していくために必要不可欠なのが、人とのつながり、つまり地縁だからです。

地縁があると、いざ災害が起きたときにはお互いに手を差し伸べあうことができます。また子どもやお年寄りを地域の目で見守ることで、日常がより安心なものになります。有限な資源やエネルギーを分け合うこともできるでしょう。

なお、共同住宅が基軸だからとはいえ、もちろん町内会・自治会に加入していた方がよいので、マンションコミュニティではなく、あえて「ネイバーフッドデザイン」と表現しています。

(図:HITOTOWA公式HPより)
(図:HITOTOWA公式HPより)

■ 地縁の正の面と負の面を認識すること

しかし、地縁には、正の面もあれば、負の面もあります。むしろ負の面もすごく大きいのが現実です。

町内会での夏祭りや餅つきでは、お子さんと楽しい時間を過ごせた方もいれば、無理やり手伝いを押し付けられた、参加できずに気まずい思いをした、という方もいるかもしれません。必ずしも地縁が濃ければよいというわけではありません。

あるマンションでのクリスマスパーティーの様子
あるマンションでのクリスマスパーティーの様子

私が住んでいるマンションでは、先月料理持ち寄りで忘年会をしました。新しく引っ越してきた方も「あたたかいコミュニティがあってよかった」と喜んでいました。

最近はお子さんが生まれた世帯も増え、お母さん同士の情報交換も行われているようです。この光景を目の当たりにするだけでも、私は幸せな気持ちになります。

一方で、私自身この1年間、マンションの理事長を務めていたのですが、会社の仕事の忙しさから思うように時間をつくれず、理事長としての業務が後手になってしまい反省ばかりです。

私の住んでいるマンションのことではありませんが、人間関係が悪化してしまったマンションや地域も少なくないでしょう。

ネイバーフッドデザインを仕事にしていると、「地縁の正の面ばかりを信奉している」と誤解を受けることもしばしばですが、私は「コミュニティ」や「つながり」には、負の面もあると認識しています。

そのうえで、義務的な「しがらみ」でもなく、誰とも関わりがない「孤独」でもない、「ほどよいつながり」が、都市の社会課題を解決するためにも、よりよい生活を送るためにも必要だと考えています。

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