BOPビジネス支援、新たなステージへ生かせ教訓

原田勝広
オルタナ論説委員
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複数の企業がそれぞれの強みを持ち寄ってBOPビジネスを進める事例もある。例えば、農業生産法人GRAとNECは、農業とITという異業種の組み合わせであるが、インドで高品質のイチゴ栽培に取り組んでいる。

また、事業の効果を考えると、複数の企業が組まないと成り立たないケースも多い。例えば、無電化村にソーラーランタンを導入することで、明かりを届けるだけでなく、夜でも子ども達が勉強できるようになる、と説明されることがある。

しかし、夜に実際に勉強できる環境を提供するためには、ランタンを届けるだけではなく、教育コンテンツの提供など、教育の価値についてのキャンペーン等も行う必要がある。このような場合に、異業種で連携することで、解決の道筋を与えてくれる可能性がある。 

原田 企業の自助努力が大前提だが、JICAにもっとアプローチしてほしい。しかし、イチゴを食べるのは富裕層ではないのか。

馬場 いまBOPビジネスについては、2通りの視点から見ている。ひとつは、栄養食品やソーラーランタンのように、BOP層が抱える課題を解決するために直接、商品やサービスを提供するもの。

もうひとつは、イチゴのように、BOP層の雇用の拡大や収入向上に資するもの。イチゴのケースは、確かに今は高価格のため、TOP層やMOP層しか買えない商材であり、BOP層はむしろ雇用や収入の面で裨益する。やがて、こうしたBOP層の所得が増え、豊かになった時には、彼らもイチゴを食べることができる。

これを「ホール・ピラミッド・アプローチ」と呼んでおり、これはBOPFS開始当初にはなかったアプローチだが、現在、このようなやり方も推奨している。

原田 まとめとして、このスキームに関心のある企業にメッセージを。

馬場 ひとつ目は、今までのODAは要請主義の下、既存の枠組み・発想を出ないものばかりだったが、このBOPビジネス支援は、企業からの提案型事業であり、今までにない斬新なアイデアの提案を期待しているということ。JICAの持っていない、考え付かない、企業ならではの強み、技術を吸い上げたい。

JICAが触媒になって企業と途上国をつなぎたいと考えている。特に海外進出の経験がない地方の企業が応募してくれれば、地方創生の一助にもなる。

ふたつ目は、BOPビジネス支援の制度は既に立ち上げたし、日々改善を図っているので、これをうまく使ってほしいということ。ただ、支援するにも、「初めの一歩」を踏み出すのは企業なので、まずは一歩を踏み出してほしい。

ユニリーバ、コカコーラといった欧米の企業も試行錯誤しながら、途上国ビジネスに取り組んでいる。日本企業もマーケットを海外企業に取られてしまう前に行動を起こしてほしい。心の底からそう思う。

プロフィール:馬場隆(ばば・たかし)
東京大学法学部卒、1997年4月、OECF入社後、中近東・東欧担当、人事部、米国留学(公共政策専攻)を経て、2002年フィリピン・大洋州担当、2004年広報室兼国会担当。
2006年~2008年、JBICフィリピン事務所にて、ミンダナオ、農業、洪水事業等を担当。2008年10月よりJICA総務部、2010年以降、インド、ベトナム担当(円借款総括)を経て、2014年10月より現職。

<インタビューを終えて>
BOPビジネスの支援スキームができたころの熱狂は冷めたようだが、応募件数が予想以上に少なくなっている、また事業化に繋がっていないというのは、日本の経営者の意識が低いとしか思えない。BOPビジネスというのは、開発の視点を持ちながらもあくまでビジネスである。先進国市場の衰退を考えた時、将来を見据え途上国に足場を築いて置くことの重要性は明らかである。JICA事業も、これからは大幅に増えることは想像しにくい。企業は積極的にBOPビジネスに取り組むべき時期であろう。幸い、グッド・プラクティス、あるいは、その逆の失敗の教訓も豊富になってきた。明日の世界と日本のために、そして自らのためにも企業の決断が必要である。

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

2015年4月10日(金)19:20

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