人権侵害が起きて初めて企業との対話を始めるのではなく、事前に予防対策を立てるためにUNGPやISO26000が良いプラットフォームになることが指摘されました。
大久保和孝氏(新日本有限責任監査法人)からは、日本企業の多くは何が人権問題であるかを認識できていないこと、SHとの対話の場を活かしきれていないことが指摘されました。差別問題や労働衛生管理の問題とされてきた問題などを人権の観点から捉え直し、問題解決に向けた具体的アイデアを生み出す場としてSHとの対話を活用すること、そのプロセスを透明化することが求められます。さらには他人ごとを自分ごと化して考えることのできる人材を育てる必要性が指摘されました。
ルイジ・コラントゥオーニ氏(トタル社、石油・ガス会社)からは、いまや多国籍企業に対して、地域コミュニティやNGOのみならず国連や地域の公的機関、銀行、投資家からも、人権保護の取り組みに関する対外的報告や透明性の確保が求められていること、人権に配慮しない企業は法的にも、事業活動上も、財務上もリスクを負うことが指摘されました。
同社では、行動規範を社内人権ガイドに盛り込み、社員に配布するほか、サプライヤーや取引先にも人権への配慮を求め、ホストコミュニティとの対話や、社会・経済発展への支援を実施していることなどが報告されました。
石田寛氏(経済人コー円卓会議日本委員会)からは、同会がリードする意識啓発プログラム(人権に関する意識啓発、ステイクホルダーエンゲージメント、課題の優先順位付け、CSR活動の情報開示)について報告がなされました。そこでは、ストレートに人権問題とするのではなくCSRとリスクマネジメントというテーマ設定にしたことによって、多くの企業から関心が寄せられた、ということも報告されました。
■人権問題への取り組み=「ライセンストゥオペレイト」
パネルディスカッションでは、「事業の継続性を考えると、バリューチェーンにおける人権問題は避けて通れない。人権問題への取り組みは社会貢献ではなく、ライセンストゥオペレイトである」「法律が未整備の国/地域に進出する際は、政府や地域の人々と対話を通して人権問題に取り組んでいくことが必要」との意見交換が行われました。
(この記事は、株式会社オルタナが2014年3月5日に発行した「CSRmonthly 第18号」から転載しました)