こうして2000年代初頭よりCSR レポートが発行されるようになり、発行企業数は飛躍的に伸びたものの、内容についてはまだ改善の余地があるといいます。なお2013年9月現在、統合レポートを発行する企業は中国にはまだないとのことです。
冨田 秀実氏(ロイド レジスター クオリティ アシュアランスリミテッド)からは、統合レポートをめぐる課題が指摘されました。日本では有価証券報告書に加え、年次報告書、CSR報告書、サステナビリティ報告書など、何種類もの報告書の作成が求められる現状に、企業は疲弊していること。財務情報と非財務情報が密接につながっている統合レポートは少ないこと。
そして、IIRCが望ましいとする簡潔なレポート(目安として20~30ページ程度)において、多様なステークホルダーのニーズをいかに満たしていくか。さらには、理想的な統合レポートができたとしても投資家の短期主義的行動を変えることは果たして本当に可能なのか、という問題提起がなされました。
パネルおよび会場とのディスカッションでは、非常に活発な意見交換が行われました。統合レポートは本当に読まれるか/実際どれくらい読まれているか分からないが、経営を動かす可能性をもっている。GRIガイドラインの策定以来、社会的課題についての取り組みが始まった。現在は組織内が統合されていない企業が多いが、統合レポートを作るプロセスを通じて経営に非財務課題を組む込む統合思考が醸成されると考えられる、と今後の可能性が示されました。
(この記事は、株式会社オルタナが2014年4月7日に発行した「CSRmonthly 第19号」から転載しました)