オランダの農業にみる産業のサステナビリティとは【戦略経営としてのCSR】

大久保 和孝
新日本有限責任監査法人 経営専務理事 ERM本部長 公認会計士
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大久保和孝

大久保 和孝 (新日本有限責任監査法人CSR推進部長)

米国やカナダ、フランスの農業が規模で生産力を誇るのに対し、オランダは最先端の生産技術で小国ながら世界第2位の農業生産物輸出高を誇る。オランダの国土は九州とほぼ同じ面積だが、例えばトマトの生産力は、日本の約9倍もある。今でこそ世界トップクラスの輸出高であるが、この数年間で大きく躍進した点に着目したい。農業の産業力が強まった背景に何があったのか。
 
11月初旬にオランダの最先端の施設園芸を視察した。また先週、2010年まで8年間オランダの首相を務め、現在は弊法人グループの一員であるJ.P.バルケネンデ氏が来日し、農業関係者と興味深い懇談をした。彼の在職中に推し進めた農業政策ゆえに今のオランダの農業がある。
 
オランダの農業が産業力強化に成功した要因が3つある。①アントレプレナーシップ(起業家精神)、②イノベーション(革新)、③サステナビリティ(持続)だ。
 
農業の産業としての強化策とは、持続的な経営を実践していくことに他ならない。変革の大きな時代に経営を持続させるためには、起業家精神に立って常に新しいことにチャレンジし、解決困難な課題にもイノベーションを繰り返して取り組まねばならない。

これまで、農業は過度な保護政策によっていたが、このままでは将来的に立ち行かなくなる危機感を感じている農家も多い。オランダの施設園芸が導入している自家発電としてのコジェネは、買取り価格の優遇措置を狙うのみならず、コスト管理と投下資本の早期回収に取り組み、経済的な自立を考えている。補助金を持続的な経営のための体制強化のきっかけとしても活用しているのだ。

■持続的な社会を構築していくためには
もともとオランダも小規模な農家が集まり、生産性が低く、南欧やアフリカなどとの価格競争に苦しんでいた。それを乗り越え、産業力の強化を実現した4つのポイントがある。
 
1つは、大学を中心にナレッジを集積し、農家にフィードバックしてきた点だ。豊富な知識と高い専門性を社会全体で共有している点が興味深い。我が国の農業系の大学の多くは、研究者中心の研究に偏り、農家とのかかわりが少ない。農業の先駆者でもあるワーゲニング大学もこの数年で大きく変わったようだ。今後は、農業系の大学を中心に、農家のための生産・経営ナレッジの集積が不可欠である。大学が果たす役割が重要となる。

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大久保 和孝
新日本有限責任監査法人 経営専務理事 ERM本部長 公認会計士
慶應義塾大学法学部卒業。厚生労働省年金特別会計公共調達委員会 委員長。福澤諭吉記念文明塾アドバイザー(慶應義塾大学)。経済同友会東北未来創造イニシアティブ協働委員会地域メンター(気仙沼担当)。 地域創生トレーニングセンタープロジェクト運営委員(キリン)。 長野県・浜松市・鎌倉市コンプライアンス推進参与。日南市特命大使(政策担当)。釜石市、夕張市等の参与・地域活性アドバイザー。 長野県農業大学校客員教授・京都大学非常勤講師ほか

2015年5月11日(月)10:05

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