IUCN(国際自然保護連合)が定義する「絶滅のおそれのある野生生物のリスト」には、2014年11月時点で約2万2千種が登録されている。生物多様性の確保は喫緊の事項だ。本コラムでは、味の素バードサンクチュアリ設立にも関わった、現カルピス 人事・総務部の坂本優氏が、身近な動物を切り口に生物多様性、広くは動物と人との関わりについて語る。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)
意識していなければ見過ごしてしまうが、気がついて見渡すと、周囲に広く存在している。世の中には、そんな物や事柄がめずらしくない。
私にとってその典型は、植物のシュロだった。あるとき教えられ、回りを見ると、こんなにも沢山あったのか、と驚くほど道端、土手、藪、林、公園、いたる所にシュロは逞しく根付いていた。
当初、中でも驚いたのは、明治神宮の林である。明治神宮には、全国から木々を集めたと聞くが、シュロは、わざわざ植えられたものではなく、野鳥が種を運んだものだろう。しかし、天然林とも見まがう神宮の杜の下生えとして、最も繁茂しているのはシュロではないか。そう感じるほど、場所によって多くのシュロを目にした。
明治神宮では、日本の自然林を再生すべく、基本的には植生に手をかけない、と聞くが、2009年以降継続して観察するに、シュロについては、低木レベルの樹高のものは多くあるものの、中高木のものは低木の数に比べて少なく、ある程度成長したところで、一部を択伐しているように感じた。
聞きかじりであるが、シュロの種は、氷点下3~4度程度まで冷えると発芽しない、木も氷点下7~8度まで冷えると枯死し始める、そんな話を聞いたことがある。