変わり始めた日本の金融機関――投融資方針の社会性改善に向けて[土谷 和之]

欧州では、こうした資金の流れに対して市民からの批判が高まり、クラスター爆弾製造企業との取引を中止する金融機関も増えているのですが、日本ではまだ十分な対策が取られていません。

もちろん、そうした兵器を製造する企業そのものにも責任があるのですが、それに対して資金を提供する金融機関にも大きな責任がある、という考え方が、世界で広まっているのです。

こうしたトレンドの中で、私が代表を務めている「A SEED JAPAN」を含む国内のNGO3団体が、大手金融機関の投融資方針について「兵器産業」、「人権」「自然環境」などのテーマごとに社会性を格付けするウェブサイト「Fair Finance Guide(フェア・ファイナンス・ガイド)」の日本版(URL:http://fairfinance.jp)を構築し、昨年12月に公開しました。

このサイトは、国内大手金融機関の投融資方針の「社会性」について調査・格付けを行い、その格付けの結果をわかりやすく公開することを通じて、金融機関が社会性を高め、「社会問題を引き起こす資金の流れ」を抑制していくことを狙いとしています。このサイトはもともとオランダで2009年に始まったのですが、オランダで大きな成果を収めたこともあり、現在では日本、フランス、スウェーデンなど世界7ヶ国で同様のサイトが作成・公開されています。

さて、格付け結果や評価手法の詳細はウェブサイトをご覧いただきたいのですが、サイトを開設した昨年12月以来、この約1年間で、大きな変化がありました。日本の金融機関からもこのサイトに高い関心を寄せて頂き、投融資方針を改善しようとする動きが出てきたのです。

たとえば、りそなグループは、フェア・ファイナンス・ガイドを踏まえ、自社のウェブサイトに「投融資先や調達・委託先(サプライチェーン)の企業活動が人権に与えるマイナスの影響に関心を持ち、法規範などに反する場合には、都度必要な対策を講じていきます。」という人権方針を記載するようになりました。

また、「環境」についても「融資を通じて、お客さまの環境に配慮した取組みを積極的に支援していく一方で、環境に重大な負の影響を及ぼすおそれのある開発プロジェクトなどへの融資は行いません。」という方針を掲げ始めています。他の金融機関からも「フェア・ファイナンス・ガイドを踏まえて投融資方針の社会性を高めるべく、社内で議論している」などの声を頂いています。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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