農業の「7次化」で、陸前高田を復興の「その先」へ

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一般社団法人SAVE TAKATA(岩手県陸前高田市)は、東日本大震災によって大きな被害を受けた陸前高田市で、「復興のその先」を見据えた地域課題解決のための事業を展開している。事業の一つ「米崎りんご」のブランド化は、ジェーシービー(JCB)による復興支援活動「『5』のつく日。」の支援を受けて大きく前進した。SAVE TAKATAの松本玄太事務局長は「風化するのは仕方ない。いまでも辛いこともあるが、それでも前に進んでいることを知ってほしい」と力を込める。(ライター・瀬戸義章)

陸前高田市は、岩手県南東部の三陸海岸沿いに位置する、人口約2万人の都市である。東日本大震災時に発生した高さ10メートルの津波によって、全世帯の7割以上が被害を受け、観光地として有名だった高田松原の7万本の松林もすべてなぎ倒された。かろうじて残った一本は、「奇跡の一本松」として、今もモニュメントに残っている。

SAVE TAKATAは、そんな陸前高田市で震災翌日から活動を始めた団体だ。物資支援や情報発信といった避難所サポート、物産展やバスツアーの開催、情報地図の作成など、この5年間でさまざまな活動に取り組んできた。今は、「復興のその先」を見据えて、陸前高田の地域課題を解決する事業を進めている。

■「もともとある地域課題を解決したい」

SAVE TAKATAの松本玄太事務局長

SAVE TAKATAの松本玄太事務局長

SAVE TAKATAの事業の柱は「ICT」「農業」「若者」だ。観光物産協会のポータルサイトなどを製作・運営するほか、陸前高田の主力産業である農業を発展させる取り組みを行っている。事業の目的は、新たな産業・新たな雇用を生み出すこと。これからの陸前高田に必要な「若者」が働けるまちづくりを目指している。

「2011年に活動を始めた当初から、10年後、20年後の陸前高田について話し合いながら活動をしていました。たとえ家屋や施設が元どおりになったとしても、どれだけの人が陸前高田に残るでしょうか。復旧・復興だけでなく、もともとある課題を解決しなければ、この街の未来はつくれないと思っています」

同団体の松本事務局長はそう話す。

SAVE TAKATAは、地域課題の解決のために、地域にもともとあった資源を活かそうとしている。厳しい寒さを連想する東北地方の中でも、陸前高田市は温暖な地域であり、雪はほとんど降らない。そのため、「米崎りんご」が明治時代から栽培されてきた。

りんごはほとんどが山間部で栽培されており、海沿いで育つ「米崎りんご」は日本でも珍しい。日照時間が長いために甘みが強くなり、また、霜が降りないために完熟した蜜がたっぷりの状態で収穫することができる。こうした品種がありながら、高齢化が進み栽培農家は減少している。

米崎りんごをブランド化し、加工や販売・サービスまで展開して付加価値を高めることで農家の収入を向上させ、若い担い手を創出する事がSAVE TAKATAの目標だ。SAVE TAKATAは、農業の6次化に、担い手づくりを加えた「7次化」を目指している。

「2011年に陸前高田市に来て初めて『米崎りんご』を知り、その美味しさに驚きました。はじめは『6次化』として、農家から加工用りんごを仕入れてジャム、ジュースに加工し、販売していました。ですが、農家の現状を知れば知るほど、原材料となるりんごそのものが無くなってしまっては意味が無いと気付いたのです。そこで、自分が作り手となり、若者を呼び込もうと考えました。米崎りんごを通して若者が活き活きと暮らせる、そんな場所作りをしていきたいのです」(松本事務局長)

松本事務局長は広島県出身だが、2012年4月、陸前高田に移住した。震災翌月の2011年4月から毎月東京から陸前高田市に通い、避難所の支援に携わってきたという。そこで、避難所運営に携わる地元の若者と出会った。「彼らのなかには、家を流されたり、家族を亡くしたりした人もいました。ですが、彼らからは『陸前高田のために』『陸前高田が好き』という言葉を聞いていました。これからの陸前高田市の復興をそんな若者たちと一緒に見て行きたいと思ったのです」。

■JCBの支援受け、事業が拡大

米崎りんごを使用したジュースやジャム

米崎りんごを使用したジュースやジャム

こうした「米崎りんごブランド化プロジェクト」を後押ししているのが、クレジットカード会社であるJCBだ。

同社は、毎年「『5』のつく日。」という復興支援活動を実施している。対象期間中、5日、15日、25日といった「5」のつく日にJCBカードを使って買い物をすると、利用1回につき同社負担で1円が寄付される仕組みだ。5年間の合計支援額は約2億5千万円にも上り、今年も2月から5月まで実施している。

JCBからの支援金は、米崎りんごをジャムやジュースにする加工や、パッケージのデザイン製作、さらに瓶詰め・梱包といった商品を流通させるための費用に充てられた。その後も事業は継続・発展し、2015年の商品は実店舗とオンラインストアでともに完売、2016年頭には、SAVE TAKATAに勤めていた岡本啓子氏が独立起業。りんご加工品の専門店「らら・ぱれっと」を立ち上げた。

ジュースやジャムは、陸前高田市のふるさと納税返礼品にもなっている。SAVE TAKATAも農地を借り受け、りんごの品質向上を目指した自社栽培を引き続き行う。

「震災から5年経ち、風化することは仕方ないと思っています。もし僕が陸前高田に住んでいなかったら、3月11日が近づかない限り、忘れてしまっているでしょう。ですから、これからは『被災地』側から発信していくことが重要です。そういった意味で、JCBのような東京の大きな企業が東北を応援し続けてくれる影響は大きい。ここにいる人は時に泣きますが、それでも元気に、『その先』へ進んでいることを知ってほしいのです」(松本事務局長)

2016年4月1日(金)11:56

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