屋上緑化を代替か 新技術「保水セラミックス」

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保水セラミックス

都市部を中心に最近注目されている屋上緑化。しかし、初期投資や維持管理のコストや手間などから導入が進んでいるとは言いがたい。そんな中、INAXはこのほど、微細な無数の空隙に水をたくわえ、蒸発性能にも優れた新素材「保水セラミックス」を使った実証実験を開始。都内のビル屋上に50平方メートルを敷き、雨水の貯留能力やヒートアイランド緩和効果を検証中だ。果たしてその実力は−。

保水セラミックスは直径が約4センチ、ホワイトチョコチップを大きくしたような色と形をしており、軽石のような手ざわりだ。体積の6割以上にも達する高い保水能力を持ち、降雨時には一時的な貯水槽の役割を果たす。また、晴天時には蓄えた水を徐々に蒸発し、周囲の熱を奪う。主な原料はタイルなどの製造時に廃棄される窯業廃土で、資源の有効利用にもつながる。

ヒートアイランドを緩和

保水セラミックスの部分は周囲より温度が20度ほど低い

実験では、保水セラミックスが約750個入った重さ9キロの袋を港区虎ノ門の民間ビルの屋上に敷き詰めた。発表当日、真夏の日差しが照りつける屋上の表面温度はコンクリート部分で56度に達したが、保水セラミックスを敷設した部分は水分の蒸発による気化熱の効果で周囲よりも大幅に低い36度を示した。ヒートアイランド現象を緩和するのに加え、建物の温度上昇を抑制し、冷房に使用する電力使用量を減らすことでCO2の削減効果も見込める。

さらに耐久性に富み、維持にほとんど手がかからないのも特徴だ。今日、ビルの屋上におけるヒートアイランド対策はもっぱら芝生などによる緑化が中心だが、重量がかさみ建物の構造に負荷を与え、しかも散水や剪定など維持費用が大きいという難点も抱える。その点、保水セラミックスは一度設置すればほぼメンテナンスフリーで、コストがほとんどかからない。

ゲリラ豪雨災害抑制に期待

実証実験風景(港区虎ノ門)

本格的な導入が期待される保水セラミックスだが、その成否を左右するのが行政の支援だ。保水セラミックスの活用による新たな環境技術の研究のため、昨年10月には産官学による有識者会議が発足。今回の実験を通じて検証を行うだけでなく、普及のための制度設計や情報発信についても検討を重ねる。

INAXの想定によれば、東京都23区内で保水セラミックスの設置が可能なビルの屋上面積は約50平方キロに上り、その際に貯留できる水の量はおよそ100万トン。23区内の蒸発面積が約8%増える計算だ。

東京都では2001年より、条例で屋上緑化を推進している。しかし、実際に義務付けられたのは敷地面積1千平米以上の建物を新築する際に限定され、既存の建物は対象外だ。1999(平成12)年から2009(平成21)年までの屋上緑化面積の合計も、約1.64平方キロにとどまる。

同社で保水セラミックスの開発に携わったサステナブル・イノベーション部の前浪洋輝氏は「既存のビルであっても短い工期で敷設でき、屋上緑化よりも安価なのがメリット。しかし普及には行政の積極的な支援が不可欠」と話す。気候変動に伴うゲリラ豪雨や都市洪水のリスクは近年急速に増しているが、これに対して官民を挙げた機動的な対応が取れるかが問われる。(斉藤円華)

INAX プレスリリース

2010年8月31日(火)10:00

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