「オルタナ式英単語術」(2) era,mull,bias

9月から「オルタナ式英単語術」を担当することになりました相島淑美と申します。近々、オルタナ編集部内で「英会話スクール」を始める予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

今回の単語はera, mull, biasです。eraとbiasはおなじみですね。

1) era
ずばり「時代」を意味します。the Obama era, the Showa eraという風に使います。

では、periodとの違いはどうでしょう。period も「時代」を意味します。違いはどこにあるでしょうか。

簡単に言うと、period は「期間」、eraは「重要な人・もの・事象、根本を揺るがすような変化、概念、スタイルなどで象徴される時代」という ニュアンスです。

Kofi Annan: The end of an era 「アナン氏死去で一つの時代が終わった」(8月23日)
https://punchng.com/kofi-annan-the-end-of-an-era/

故アナン国連事務総長について書かれた記事です。The end of an era は文字通り「時代の終わり」ですが、アナン事務総長がひとつの時代/概念/変化の象徴としてとらえられていることが分かります。

上の記事はアナン氏への敬意に満ちた文章でしたが、eraがいつもそう使われるとは限りません。

In Trump Era, Frustrated Democrats Are Asking, ‘Where Is Obama?
「トランプ時代、イライラ募る民主党員『オバマはどこだ?』」(9月6日)
https://www.npr.org/2018/09/06/645337047/in-trump-era-frustrated-democrats-are-asking-where-is-obama

ネガティブな意味にせよポジティブな意味にせよ、eraという単語 から「(為政者が掲げる)ある概念が支配する時代」というイメージをつかんでください。

もう一つご紹介します。

Hey, Twitter and Facebook: Your wild west era’s coming to an end
「いい?ツイッターやフェイスブックの「やったもん勝ち」の時代はもう終わり」(9月6日)
https://www.cnet.com/news/congress-turns-up-heat-on-facebook -and-twitter-but-what-comes-next/

wild west はアメリカ開拓時代の西部のこと。

自分の正義を振りかざし、わき目もふらずパイオニア精神で攻めていけば良かった時代はもう終わりというわけです。

2) mull
mullは耳慣れないかもしれません。「いろいろな面から時間をかけてじっくり考える」という意味です。

この単語が使われている場合、「すぐには決められない(といいたい)のだな」と想像できます。そこから筆者の意図が読み取れる場合もあります。

Cities and states mull straw ban
「市や州、プラスチック製ストロー廃止を熟慮」(7月10日)
https://abcnews.go.com/Politics/cities-states-mull-straw-ban /story?id=56455746

mull の単語ひとつで「プラスチック製ストロー廃止の傾向に対して、やや否定的な視点が書かれているのかな」とピンときたら、文全体が読みやすくなりますね。

次の英文はmull 本来の意味である「時間をかけて考える」に近い用法です。
Trump adviser says Ukraine should mull alternatives to Russian gas
「トランプ側近『ウクライナはロシア産ガス以外の可能性を検討すべし』」(8月24日)
https://www.reuters.com/article/us-ukraine-usa-bolton-gas/trump-adviser-says-ukraine-should-mull-alternatives-to-russian-gas-idUSKCN1L917O

じっくり考えて、どちらの方向に結論をもっていかせようとしてい るか。mull が出てきたら、「すぐには決まらない」理由を考えてみると読みが深まるかもしれません。

3) bias
カタカナ英語としてよく用いられます。「偏見・偏見に基づく不公平な判断・行為」を指しますが、必ずしも「不平等感」を含むとは限りません。

まずはこの夏、大学医学部を揺るがした「女子受験者の合格数が抑えられていた」問題から。

Japan to probe gender bias at medial varsities
「医学部入試の女子差別 日本政府が実態調査へ」
https://www.straitstimes.com/asia/east-asia/japan-to-probe-gender-bias-at-medical-varsities

ここで用いられているprobeは「手術道具などで探る」ことです。医学部の問題を取り上げた記事のタイトルにはぴったりですね。

さらにprobeには「(回答者が)答えたくない物事について、工夫して答を引き出す」意味合いもあります。このタイトルを読んで「これは、なかなかスッキリ回答が得られそうにないんだな」と感じ取ってください。

Beware the perils of cultural, unconscious bias
「文化に潜む無意識のバイアスこそ危険」(9月7日)
https://www.bizjournals.com/washington/news/2018/09/06/viewpoint-beware-the-perils-of-cultural.html

手ごわいのは、「文化的無意識のバイアス」かもしれません。文化のなかで「当たり前」と信じてしまっていることに、問題の本質がある場合も。

外国語の学習がその「当たり前」な文化的バイアスに気づく第一歩となることを願っています。

aishima

相島 淑美(神戸学院大学経営学部准教授)

日本経済新聞記者、清泉女子大学英文学科教員を経て現職。翻訳家。鈴木淑美名義でJFK伝記など20数冊の訳書がある。 博士(先端マネジメント、関西学院大学)、MBA(関西学院大学)、修士(文学、慶應義塾大学)。文化・文学の視点から日本のマーケティング、SDGs、エシカル消費について研究している。執筆記事一覧

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