ジャパン・プラットフォーム 失敗の本質①

原田勝広
オルタナ論説委員
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[論説委員コラム]
2000年に政府、企業、NGOが「三位一体」で立ちあげた難民、災害被災者支援組織、ジャパン・プラットフォーム(JPF)が迷走している。「各セクターのリソース(資源)を結集して現場に日本人の心を届けてくれる」はずの革新的な仕組みはなぜ失敗したのか。

■被災者置き去りの「NGOファースト」

日本のNGOは規模的に見ると欧米のNGOの10分の1以下と弱小である。世界で太刀打ちできない苦い経験から「NGO同士で協力するから政府、経済界も支援を」と働きかけJPFが誕生した経緯がある。フランスでは紛争で難民が発生すると、市民が「国境なき医師団(MSF)の出番だ」と寄付が殺到する。JPFで切磋琢磨しそんなNGOがひとつでも二つでも日本にも生まれてくれればと国民の期待を集めたものだ。しかし、NGO同士の協力はまったく行われていない。同じ地域で活動していても、支援場所はバラバラ。評価に当たったコンサルタントから「各NGOの活動現場が分散しているだけでなく活動内容が重複しており、効率性に問題がある」と厳しい指摘をされるほどだ。

NGOのJPF加盟については、当初、海外での活動実績が3カ国、年間5000万円以上などの資格条件を設けていた。これが企業など支援者の信頼を得られた要因のひとつだったが、いつの間にか誰でも入れるようになった。加盟NGOは現在約50団体に膨れ上がっているが、援助能力の低い団体も入っている。例えば、自己資金がゼロ、事務局スタッフは1人、海外での援助実績なし、などという信じがたい団体も目に付く。能力の優れたNGOに資金を集め、「被災者ファースト」で、質の高い援助を届けるはずのJPFは、善意に満ちてはいるがひ弱なNGOを救済する組織に変わってしまっている。

■政府助成金という麻薬

JPF設立から20年近くたっても日本のNGOは欧米のNGOに追い付いていない。むしろその差は広がっている。政府からの助成金というのは、一種のカンフル剤みたいなもので瞬間的に元気になるが、常用すると体に変調をきたす。JPFの場合、外務省が年間50億円とか60億円ものODA資金を助成しており加盟NGOの助成金依存度が異様に高くなっている。

自己資金比率(JPFが2016年度に集計した分)をみると、国際的に知名度の高い欧米系のワールド・ビジョン・ジャパン、プラン・インターナショナル・ジャパン、メデュサン・デュ・モンド・ジャポンなどはさすがにほぼ30%を超えているが、アドラ・ジャパン4.3%、SEEDS Asia0.7%, CWSジャパン0.6%と活動資金がほとんど政府頼みの団体もある(※注)。自己資金は市民社会からの支持のバロメーターであることを考えると、本当にパブリック・サポートがあるのかと思ってしまう。

■不正で社会的信頼失う

JPF発足時は、「緊急人道支援は初動が重要。このための緊急資金は外務省に用意してもらうが、NGOは実績をあげ、あとは民間資金で自立する」という構想だった。将来的には、政府の助成金に頼らず、企業や国民に支えられる新しい市民社会の象徴にとの夢を描いた。しかし、夢は幻に終わった。NGOの3要件というものがある。ミッション性、自立性、市民性である。

皮肉なことだが、JPFは多額の公的資金を流すことでNGOの自立性、市民性を損なう結果を招いている。「助成金に頼りすぎると依存と腐敗を招く」との指摘通り、自己資金が減ると不正のリスクが待っている。ことしJENがヨルダンでトイレ建設用に助成されたJPF資金をごまかして映画館を建設した不正が発覚した。難民キャンプでの活動は評価が高かっただけに、その衝撃は大きかった。不正はユニセフ資金についても行われていたといわれる。米国人臨時職員の告発がなければ、まだ不正は続いていたに違いない。JENの幹部は事件前から「政府への依存が高すぎる。何とかしたい」と危機意識を持っていたが手遅れだった。

またアドラ・ジャパンはシリア難民支援で、EUから経済制裁を受けているアスマ大統領夫人の団体に架空の団体名で資金を流していたことが判明した。アスマ夫人の団体は国連の支援金の一部が軍事費に流失した疑いがあると英紙がスクープしており、杜撰さが際立つ。JPFの歴史は不正の歴史でもある。地元業者へのキックバック要求、スタッフの日当ピンハネなど枚挙にいとまがない。理事長がJPF理事だった難民を助ける会は会計検査院の監査で危険地手当の不適切な会計処理を指摘されたばかりだし、JPF副代表理事だったHANDSは海外事務所の経費をごまかし外務省に摘発されている。

ISO26000ではCSR(企業の社会的責任)から「C」つまり企業を削除、あらゆる組織が社会的責任を有することを確認している。自浄能力を高め、不正防止策を確立するなどコンプライアンス意識を向上させない限り、社会的信頼の回復は望めず、自壊への道を歩むことになるに違いない。

※注:記事掲載当初、ジャパンハートは「自己資金比率ゼロ」としていましたが、ほとんどを自己資金でまかなっていることがが分かったため(2016年度の経常収入における助成金の比率は3.4%)、該当部分を削除しました。お詫びして訂正致します。(2018年10月24日11時)

原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

2018年10月19日(金)8:00

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