トヨタの「問題解決」でマネジメントを向上

■トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

トヨタ財団は5月13日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える第4期「トヨタNPOカレッジ カイケツ」を開講した。離島の医療問題や防災、発達障がい児子支援など、さまざまな社会課題に取り組む20団体約30人が参加する。カイケツでは、約6カ月間かけて問題解決の8ステップに取り組み、11月の発表会で成果を発表する。

第4期カイケツの参加者ら

国内のNPO法人は5万を超え、社会課題を解決する担い手として期待値は年々高まっている。一方で、経済基盤がぜい弱だったり、オーバーワークに陥りがちだったり、組織が抱える課題は多い。

そこで、トヨタ財団は2016年に「トヨタNPOカレッジ カイケツ」を開始した。助成金を拠出するだけでなく、トヨタ自動車の手法を活用し、問題解決力を身に付けてもらうことを目的にしている。

講師は、トヨタ自動車で長く品質改善に取り組んできたクオリティ・クリエイションの古谷健夫代表取締役、同じく元トヨタ自動車でのぞみ経営研究所の中野昭男所長、日野自動車TQM推進室の鈴木直人主査、中部品質管理協会企画部の細見純子次長の4人が務める。

■NPOも「働き方改革」を

美しい富士山を次世代に残すことをビジョンに掲げる認定NPO法人富士山クラブ(山梨県富士河口湖町)は、富士山の環境保全活動を行っている。1998年11月の設立以来、ごみ拾いや外来植物駆除活動などを続けてきた。

専従職員5人でボランティア4000人を抱え、市民や行政からの期待に応えたいという思いからオーバーワークになりがちな運営体制になっているという。富士山クラブの青木信子事務局長は、「楽しく満足感を得られる仕事をNPOで実現したい」という思いでカイケツに参加した。

カイケツを通じて、どのような働き方を目指すのか、なぜオーバーワークになってしまうのかを探っていく。

■いまの状態を「ありのまま」に認識する

初日のグループワークでは、NPOの存在意義や難しさなどを共有した

第4期初日の5月13日には、古谷講師による講演「トヨタが取り組んできた問題解決――問題解決の実践で、より良い社会の実現を」も行われた。

古谷講師は「そもそも何のために問題解決するのか。それは自分のためではなくお客様に喜んでもらうため」と力を込める。この場合の「お客様」とは、消費者だけではなく、被支援者やボランティアなどさまざまなステークホルダーを含む。

トヨタの問題解決は、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因解析」「対策立案」「対策実行」「効果確認」「標準化と管理の定着」の8ステップで進められる。

古谷講師は「しっかりと計画を立て、計画と実績の差異をメモすることが重要。そうすると、あとで振り返ることができる。いまの状態をありのままに記録しなければ、後でまた同じ苦労をしてしまう」と指摘した。

さらに「問題なのは、問題があることではなく、それを隠してそのままにしてしまうこと。自分の役割を理解している人は、問題を解決するパワーがある。問題を解決していくことは、働く喜びにつながる」と強調した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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