「志」を求める若者たち(4)市民ニーズから政策を作る!

若者の政治的無関心が嘆かれて久しいが、市民の声を政策形成過程に届かせようという団体がNPO 「PPI(Policy Process institute 政策過程研究機構)」。20―30代のメンバーが週末に集まり、恵比寿の事務所の家賃を分担しながら提案型シンクタンクを担う彼らの 志とは。(聞き手: 今一生)

NPO PPI

  • 村田章吾PPI理事
  • 間中健介PPI理事
  • 日野仁尊PPI理事
  • 渡瀬裕哉PPI理事
  • 岡村周実PPI理事
<オブザーバー>
坂田顕一 Brand New Japan 運営委員

本誌オルタナ10号P.64からの続き

――メンバーたちの政治に対する意識は共通していたのですか。

村田 そうです。もっとも、現在はより多様なメンバーが集まっているので、創設時から比べて幅広い議論が行なわれています。それぞ れに思いがありますが、創設メンバーは特に税・財政問題への意識が強いです。創設メンバーの中心を担った福田隆之(現・PPI理事)はまさに財政が専門で す。「なぜ私たちの世代が800兆円もの借金を抱えなければいけないのか」という話はいつもしてきました。

――「ほっといたら2020年にこうなるから、こういう政策が必要です」というプレゼンテーションになると思うんだけど。

間中 まさにいまPPIで、今後20―30年の日本はどういう戦略を持って何をすべきか、という議論をしています。

村田 特に「来 年の春に出します」というように期限を区切ってはいないのですが、じっくり議論して練ったものを示したいと思っています。

――東国原知事の選挙でも、PPIの有志が手伝ったそうですが、具体的には何をしたのですか。

08年8月、東国原英夫・宮崎県知事と議論する PPIのメンバーたち
08年8月、東国原英夫・宮崎県知事と議論する PPIのメンバーたち

間中 彼のマニフェスト作成のお手伝いです。東国原さん自身の思いを政策として具体化する際に、PPIのメンバー数名が関わったということです。

岡 村 宮崎の現状を調査したり、実際に進んでいる総合計画と東国原さんの理念の整合性を検討したりしていました。政策の優先順位とか、新しい政策も練り上げ ました。

村田 PPI以外の方々にも関わっていただいたので、PPIとしてお手伝いしたというよりは、有志のみんなでやったということで す。

間中 「宮崎のセールスマン」というキャッチは岡村さんによるものです(笑)。

―一方、PPIの活動としては、税金の恩恵とか、財界トップ企業とかからのお金が流れてこない人たちのなかで、ボトムアップ的にモノが言いたいんだけど言えない人たちのために政策を作って国会に持っていきます、と言うなら話がわかりやすい。

村田 (私たちがPPIを創設した)大学生当時に使っていた「市民」という言葉ですが、大学生というのはそんなに社会から疎外されているわけではあ りません。
ただ、私たちには投票以外に政治にアプローチする手段がない。それぞれが働いて生活しているなかで、政治への特別なアプローチ手段をもっていない。私たち がやっているインターネットアンケートは、そうした人たちを対象にして、政策形成への経路を示したいという思いがあります。

日野 PPI のインターネットアンケートは、単に調査結果を社会に発信しているのではなく、そこには諸先輩方のメッセージが凝縮されているんです。

岡 村 市民が投票以外に政策形成に関われるようになるための道を作りたいんです。

村田 ふるさと納税では、インターネットアンケートがメ ディアで取り上げられて政策担当者の目に止まって政策形成の参考にされた。でも、そういうところで止まっているのは確か。

――オルタナティヴな政策立案インフラを作る、と言うほうがわかりやすいよ。

いま週何回くらい集まっているのですか。

村田 昨年までは週1-2回会っていましたが、私が選挙に出たり、渡瀬さんが会社を設立したりという、メンバーの環境変化もあり、会う頻度は減りま した。ただそうは言っても平均して週1回程度は会っています。

間中 会員向けの勉強会やイベントも実施していますが、会員に限らない多く の市民を意識した活動は、もっともっと充実させていく必要があると認識しています。

坂田顕一(オブザーバー/Brand New Japan 運営委員) 今回Brand New Japanと いうネットワークを作ったので、PPIにもいろいろな発信をしてもらって、他団体に刺激を与えてほしいです。PPI以外の団体もいろいろな悩みを抱えてい ます。各団体とも、メンバーが固定化しがちで、新しいターゲットへのアプローチはなかなか出来ていません。Brand New Japanの意義のひとつには、それぞれの団体が新しい仲間を得ることがあります。そうしたポータル的なネットワークはこれまでなかったので、新たに作っ たんです。

――でも、PPIにほとんど男しかいないのでは市民の声を反映しているとはいえないよね。

女性と子どもが欠けているというのは、何か決定的に欠けているんじゃないか(笑)。

間中 それについては毎週議論しています(笑)。「議論する」だけではダメですが(笑)。

渡瀬 無理にカジュアルで行くよりは、 ハッキリと「政策オタク」と言い切ってしまっても良いんじゃないかと思います(笑)。まずは我々の市民権を確保する方が・・・。

村田  「政策業界のAKB48」として、「会いに行ける政策アイドル」を目指すとか(笑)。

――受託事業は?

村田 営業は特にしていません。個人的な関係性から派生するものがあります。経理は税理士と契約しています。

渡瀬 家賃は基本的に は、会員からの会費で賄っています。

――PPIとして「いつまでにこれを成し遂げよう」という目標はありますか。

渡瀬 政治の側から見れば「何だこいつらは」と思われていた側のほうから、新しい手法を示す。それが大事だと思っています。「風穴を開けたい」と 思ったら、それを受けて議論してくれる人がPPIにはいます。「これをやりたい!」と言ったときに勇気を持って行動するメンバーがいなくなったらPPIは 終わりだと思います。

岡村 昔イタリアのシチリア島に住んでいたことがありますが、お金はなくとも非常に豊かな生活がありました。1週間 1万円もあれば快適に暮らせますし、一般の家庭でも海・山に別荘をもち、海に行けばレジャーボートが係留されています。
自家用レジャーボートでのレジャーなんてものは、日本では一部の富裕層だけの楽しみになってしまっています。その裏には港の保護の名の下での規制・補助金 があるわけです。様々なことを補助金、規制で縛ってしまった結果なんです。
イタリアには、日本にいる限りできない「豊かな生活」がある。私たちは国からいろいろなものを取り戻さなければいけないんです。
年金の議論だって5年間同じことをずっとやっています。こんな状況では、外国から誰も来たがらないし、2020年には財政赤字も膨大に膨れ上がっているは ずです。

日野 先日宮崎に行って川を泳いできたんですけど、「こんなにきれいな川があるんだ」とハッとしたんです。
政策って、アタマの良い人が東京に集まって作るというイメージがありますが、自分の体験のなかに根付いているものが政策として広がっていって、社会を変え るパワーになる、ということを伝えていきたいと思います。

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