米国で相次ぐラウンドアップをめぐる訴訟

1970年代から、安全を謳われた除草剤として家庭から、農業や商業施設など幅広く利用されてきたラウンドアップ。しかし今、ラウンドアップによる発ガン性をめぐる訴訟の数は、米国内で18,400件以上に上る。発ガン性物質として知られる化学物質グリホサートを含む同製品は、非ホジキンリンパ腫(NHL)=悪性リンパ腫を引き起こす可能性が高いとされる。しかし最も問題なのは、その事実を製造元である「モンサント」が長い間隠蔽してきたことだ。(寺町幸枝)

今も市場に出回る「ROUNDUP」製品 ©︎Mike Mozart

米国では先月、元NFLのプロフットボーラーであるメリル・ホッジ氏が、このラウンドアップをめぐる集団訴訟の原告の一人として提訴していることがわかり、話題に上っている。

ホッジ氏は、1977年から農家の手伝いを長年行い、ラウンドアップの散布を行った経験があった。80年代後半から90年代に活躍したホッジ氏は、引退後の2003年に非ホジキンリンパ腫(NHL)を発症している。

■明らかになった内部資料

相次ぐ訴訟で次々と明らかになっているのが、モンサントの内部資料だ。今年5月、カリフォルニア州の農夫が勝訴し、約20億ドル(約2,200億円)の賠償金を得る判決を受け取った。

この訴訟の公判前手続きで、内部資料から、モンサントがグリホサートの有害な影響について、改ざんしたデータを利用してきたことが明らかになった。

さらにモンサントは、科学者や研究者へ助成金や補助金を提供することで、一部の専門家たちを囲い込み、ロビイング活動に利用していることが判明している。

この件について、米国の情報公開法(FOIA)を使って情報公開要求を行なっているのが、米国の食の安全を調査するNPO「U.S.Right to Know(US知る権利団体)」だ。

同組織は2015年から活動を開始し、主にモンサントを中心とした米国の食料や飲料業界の闇の部分を調査し、公表している。中でもモンサントにまつわる情報をまとめており、内部資料やこれまでの公判にまつわる法的資料や訴訟記録など、信頼できる情報が並ぶ。

同組織の調査が、ニューヨークタイムズの1面記事や、タイムズ誌、ガーディアン誌など世界的なメディアでの情報発信につながっている。

一方米国版ガーディアン誌によれば、モンサントは、米国人ジャーナリストのキャリー・ギリアムさんやミュージシャンのニール・ヤングさんなどモンサントを批判する影響力の高い人を標的にし、ソーシャルメディアなどを通じて、信頼を失墜させるような発言を第三者を通じて書き込ませているという。

■逆方向に走る日本

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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