変化が必要な現在、社史は価値創造へ(中畑 陽一)

これまで社史の役割の重要性や、社史を重視する資生堂の事例に触れてきましたが。最後にさらに踏み込み、社史とサステナビリティーとのつながり、その向こうに見える社史の新たなる地平について、可能性を探ってみたいと思います。

「価値創造」のコンテキストとしての歴史

社史の発行プロジェクトは、企業自身の持続可能性のみならず、企業が持続する前提となる社会の持続可能性や、社会との関係性を見直す最大のチャンスです。

そしていわゆる「価値創造」の歴史的再構築が可能となるのも社史編纂という未曽有の事業なのです。以前取り上げた『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済社)において、成長より継続を重視した企業の地域コミュニティーとの結びつきの重要性が説かれています。

今やいかなる企業も社会との価値観の共有やバリューチェーンへの責任を軽視することは、その企業自身の存在価値と存続可能性に影響します。

持続可能な経営を実現させるということは、それ自体が持続可能な社会との親和性が高いということでもあります。なぜなら、企業が「儲け」を何十年、何百年と出し続けていくためには、多くのステークホルダーと長い関係性を築き上げ、信頼し続けてもらう必要があるからです。

そして企業の歴史には、その企業の存続理由、コアとなる強み、社会との関係性などがコンテキストとなって幾重にも積み重なっています。いくつか事例を見てみましょう。

企業のルーツや社風に見る「本物」の精神

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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