EVやソーラー用ニッケル需要増、鉱山で環境悪化も

EV(電気自動車)のバッテリーや太陽光パネルなどに使われるニッケルの需要増で、生産地である鉱山周辺地域の環境悪化や住民の健康被害の懸念が増している。アジア太平洋資料センター(PARC)など環境NGOが7月25日に開いたオンラインシンポジウムでは、フィリピン・パラワン島など住友金属鉱山出資会社の生産拠点周辺での水質汚染や健康被害が報告された。「脱炭素社会」への移行に向けて、企業に対して環境や人権など「負の側面」の配慮が求められている。(堀理雄)

フィリピンのニッケル鉱石生産量は2018年に34万トンで、インドネシアに次いで世界2位。今年1月のインドネシア政府の輸出禁止方針を受け、2020年は世界最大のニッケル生産国となる見通しだ。ニッケルは電気自動車のバッテリーのほか、スマホ充電池や硬貨、ステンレス鋼など様々なものに使われている。

住友金属鉱山はフィリピンで、一部権益を持つ鉱山からの採掘のほか、54%の株式を出資するコーラルベイニッケル社、75%を出資するタガニートHPALニッケル社の2つの精錬拠点において年間計6万トン体制で生産し、日本の工場へ輸出。ニッケル鉱石の採掘から加工、EV用電池の材料生産まで担う垂直モデルが特徴だ。

■流域河川から六価クロム、基準値の6倍も

環境NGOのFoEジャパンの調査によれば、フィリピン・パラワン島のリオツバ村にあるコーラルベイニッケル社の精錬所周辺を流れるトグポン川からは、六価クロムが検出されている。発がん物質であり、皮膚疾患や内臓疾患を引き起こす有害物質だ。

2009年以降約10年にわたってこの川の水質を定点調査している大沼淳一・元愛知県環境調査センター主任研究員によれば、雨によって鉱山の露天掘りエリアやプラント構内から流れ出た可能性が高いという。日本の環境基準を上回る状態が続いており、多い時は基準値の4~6倍に上る。

トグポン川における六価クロム測定結果(大沼淳一さんの25日のオンラインシンポジウム発表資料より抜粋)

地元住民への聞き取り調査によれば、皮膚疾患や咳、頭痛などの健康被害のほか、漁獲量の減少など生業への影響も出ているという。大沼さんは「住民の飲み水や沿岸部のヘドロからも六価クロムが検出されている。汚染防止対策の実施が急務だ」と強調する。

■「消費者にも知ってほしい」

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2020年7月28日(火)7:00

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