「志」を求める若者たち(10)大学生の環境意識を高めたい

持続可能な社会をめざし、大学生たちが発信する環境系フリーペーパー。それが全国の大学に配布・設定されている「susteco(サステコ)」だ。 発行部数は5000部だが、友達に回覧する仕組みを試行錯誤し、読者を増やしているそうだ。(聞き手:今一生)

サステコ

久保田瞬(22歳) サステコ・代表。慶應義塾大学4年生。

田澤俊希(21歳) サステコ・ライター。東邦大学4年生

関和音(19歳) サステコ・総務、デザイナー。デジタルハリウッド大学2年生

山本彩(20歳) サステコ・広報、ライター。東京女子大学3年生

本誌オルタナ16号P44からの続き

――どうして大学生向けに発信しているのですか。

久保田 私たち「サステコ」のコンセプトは、大学生の身近なところから環境を考える情報を発信するということ。環境問題やサステ ナビリティ(持続可能性)という言葉は普通の大学生には浸透していないのが現状です。環境というだけで固い印象を受けやすいでしょう。それらをふまえた上 で、できるだけ身近な切り口から伝えていきたいと考えています。
これは創刊当初から変わらない理念で、サステコでは大学生が日々の生活の中で気軽に取り入れやすい情報を提案しています。8号では、「フリマ(フリーマー ケット)に行こう!」という記事がありますが、これはまさに大学生が身近に感じることのできる記事です。
この記事を読んで面白いなと思ったら気軽に取り入れることができます。このような大学生にとって身近な記事というのは、当事者である学生が作成したほう が、よりわかりやすいものができるのではないかと考えています。

――サステコでは、「ヨミカキマワセ」、「ワタシテコ」というシェアマガジンとしての仕組みを持っているそうですが、どのようなものですか。

久保田 読んだら捨てるのではなく、「ヨミカキマワセ」(=読んで→書いて→友人に回す仕組み)と、「ワタシテコ」(=読んだ ら友人に回す仕組み)で、より多くの学生に読んでもらいたいと考えています。
1号から5号までは、あるお題に沿って読者に書き込みをしてもらい、それをネタにして友達に回してもらおうという取り組みもしていました。ただ、まだまだ 回覧率は低いので、より良い仕組みを構築していかなくてはいけないと考えています。

――現在、サステコのメンバー数はどれくらいいますか。

久保田 メンバーは約20名います。ほとんどが別の大学に通っており、専攻も様々です。4月にmixiで呼び掛け、オリエン テーションを開催し、メンバーが12名程増えました。山本も新メンバーの一人です。以前は、女性の比率が高かったのですが、現在は男女比が半々といった感 じです。
そもそもサステコを作ったのは、立命館大学の7年生の学生でした。リクルートに就職した彼は、卒業後もサステコの相談役という形で飲み会に参加してくれた り、困った時には手助けしてくれたり、よくサポートをしてくれていました。二代目の代表は、中央大学の4年生でした。彼女も卒業後はリクルートのグループ 会社へ就職しました。卒業した先輩たちは、卒業後もサステコを気に掛けてくれていて、飲み会に来てくれたり、相談に乗ってくれたりしています。

――サステコの活動を通じて、社会人になってからの目標が見えてきましたか。

久保田 僕は、慶應義塾大学の実質5年生です。大学1、2年生のとき、僕はネットゲームばかりしているひきこもりでした (笑)。学校と家とネットゲームの世界だけで生きていました。
環境の授業も取っていたのですが、あるショッキングな授業を受けました。それは、原子炉の中で働く被爆労働で亡くなった方のお母さんを呼んできてお話を聞 くというものでした。また、循環型社会のモデルが日本にあるということで、授業の中で農業従事者の方に直接お話を聞くなどという機会もありました。
そんな中で、環境問題は解決できるということや、原発の問題は複雑で一筋縄ではいかないということを、どうにか伝えていきたいと思いました。そして、環境 をキーワードにして働いてみたいと思うようになりました。実際、働くとはいっても、いろいろな仕事がありますし、環境の仕事とはどんなものだろうというこ とが全くわかりませんでした。
そこで、まずはボランティアを募集する集まりに参加しました。当時のサステコの代表がその場に来ていて、面白そうだなと思ったのがサステコに入ったきっか けです。取材に行く機会も多く、色々な方に会えます。そもそも僕は環境に詳しくはなかったので、自分でいろいろ勉強しました。その中で、自分なりに環境と いう業界全体を見渡すことができるようになりました。
NPOの方や大手の企業の方、ベンチャー企業の方にお話を伺い、様々な働き方を見る中で、自分は何をやりたいかということが徐々に定まってきました。結果 的に環境省へ行くという道を選びました。

僕は環境には全く詳しくありませんでした。学校ではデザインを専門に学んでいて、1年生の時から出版などにも興味を持ってい ました。そのため、自分の中でフリーペーパーを作りたいという思いを何となく抱いていたのです。
まずは視野を広げることから始めようと思い、ボランティア活動をしました。その中の一つが昨年8月に行った、アイスランドでの国際ボランティアです。そこ で山の中にハイキングコースを作りました。現地の人が気軽に足を運び、環境と親しみ、ハイキングをしたりピクニックをしたりできるように手助けをしまし た。
そこで、環境と人を繋げることは面白いことなんだと感じ、自分の持つ技術を組み合わせれば、何か面白いものができるのではないだろうかと思いました。そん なときに、サステコでデザインをしている知り合いに紹介され、サステコに参加することになりました。
僕はデザインを専攻しているので、漠然と大手広告会社に就職したいという思いがありました。サステコに入る以前は、企業に「社会的責任」を求めてはいませ んでしたが、CSR活動や、企業が社会に与える影響などを考えるようになりました。ボランティアやサステコの活動を通して、社会に与える影響や、どう貢献 していきたいか、ということが明確になってきました。

田澤 僕は、働き方を考える上で、環境経営のインターンシップに行ったことに大きく影響を受けました。実際に中からみると、外か らは見えない難しい局面もあったり、社員の中にも温度差が生じていたりという問題点もあるようでした。環境経営を行う人たちは技術出身が多く、技術系でな いとまとめられないこともあると知りました。
僕はもともと理学部の社会科学専攻です。理学部のノウハウを活かし、エネルギーの基礎などを理解した上で、工場で働く人などの現場の気持ちも把握しつつ、 環境コンサルティングしたいと思うようになりました。来春からは、それらを活かせる仕事に就く予定です。

山本 私は現在、現代文化学部という学部に所属しており、マスコミやメディアの勉強をしています。私がサステコに出会ったのは、 環境の側からではなく、情報発信の側からでした。
そんな私がサステコに入って一番変わったのは、自分の生活や自分の中の視点だと思います。今まで気を使っていなかったことも自分のできる範囲で環境に優し い生活をしようと心がけるようになりました。ベタですがマイ箸やエコバックの使用などです。
環境に少しでも配慮した暮らしをするということは、自分のことばかりでなく他人のことまで気を使える心の余裕がなくてはならないと感じています。サステコ の活動の中で、様々な方々にお話を伺う機会があるのですが、環境問題は、自分の身の回りのことばかりに目を向けていたのでは解決しないのだと思います。
自分さえ良ければいいとか、ただお金が儲かればいいなどという考えでは、みんながハッピーにはなれませんよね。私もあなたも幸せと感じる生活が、結果的に 持続可能社会に繋がっていくのだと思います。サステコの活動からそんな気付きを得ました。
これから就職活動もありますが、社会のために自分にできることは何か、小さなことでもいいからその視点を忘れないようにしたいです。

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