後退する民主党の気候変動政策(中)

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経済産業省(東京・霞が関)

民主党政権の環境政策の後退は、自然エネルギーの「全量固定価格買い取り制度」でも見られる。これは太陽光や風力などを利用して発電された電気を電力会社が購入し、そのコストを電力料金に上乗せして国民全体で負担を分かち合う仕組みだ。しかし制度設計を経産省の官僚が主導し、政治家の力不足で官への依存が増している。

■欧州の成功例に刺激され導入

全量買い取り制度は欧州主要国で導入された。ドイツでは太陽光発電が急速に伸び、同発電パネルの生産量は2006年に日本はドイツにトップの座を明け渡した。

自然エネルギーは現時点で発電コストが高くなりがちだ。技術革新と普及による生産の拡大によって長期的にコストは下がるが、これまで経産省は買い取り制度に消極的であり、一方で民主党は導入を主張していた。

ところが政権交代の直前、経産省は09年8月に家庭用電力向けの余剰電力買い取り制度を導入。そして民主党政権になってから、風力など事業目的の発電も対象に広げる全量買い取り制度を検討している。

しかし官僚主導の制度設計は行き詰まりを見せる。日本経団連は電気料金上昇を懸念して猛反対し、「環境税実施と同時に実施されれば素材産業に大打撃を受ける」(幹部)と唱える。

自然エネルギー事業者の失望も大きい。経産省は太陽光以外の買取価格を1キロワット当たり15~20円に設定する意向だ。価格を引き下げる狙いとみられるが、自然エネルギーは種類や地域で発電コストが異なるため、一律の設定にそぐわない。こうした状況下で制度の設計の先行きは不透明だ。

■制度作りを官が促進する

民主党政権は「政治主導」を唱えるが、一連の自然エネルギー政策では政治家の姿は見えず、折衝や調整の主役は経産省官僚だ。「官僚が自らの影響力が増す仕組みを作り、エネルギー政策の『囲い込み』をしている」。民主党の環境政策のブレーンで環境エネルギー政策研究所の飯田哲也代表は現状を分析する。

飯田氏によると、買い取り制度をめぐる議論には「官の意図的で隠れたサボタージュ」があるという。経産省が出す資料には既存の電力網に自然エネルギーを組み込む費用を高めに算出し、技術革新を考慮しないなど、専門家が見るとおかしな設定が数多く記されているという。「『20世紀型エネルギー体制』、つまり原発の利用、事業者の地域独占、経済効率優先という今の形を部分的に作り直した上で存続させようとしている。CO2を大量に排出し、官僚の権益を守るという、これまでのエネルギー政策の失敗を繰り返しかねない」と飯田氏は指摘する。

民主党政権の「政治主導」は外交、税制、経済政策など多くの場面で失敗を重ねた。自然エネルギーをめぐる政策でも政治の力不足で生まれた空白を官僚が埋め、新しい形の官僚支配が生まれつつあるのかもしれない。(オルタナ編集部=石井孝明)2011年1月18日

2011年1月19日(水)11:00

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