全量買取法案は経産省の権限強化?

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退陣論の強まる菅直人首相が重要課題と位置付けたことで注目を集める、自然エネルギーによる発電の全量買い取り法案。表向きには自然エネの普及を促す法律と説明されるが、法案を読み込むと必ずしもそうとは言えない。買い取り価格を政府が決めるため、所管する経産省・資源エネルギー庁が権限を強めかねない「仕掛け」が秘かに盛り込まれている。

同法案は、太陽光などを使って発電された電気を電力会社が買い取り、電気料金にその費用を上乗せし、電気利用者全体で負担する仕組み。正式名称は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」という。

ここで言う「電気事業者」とは主に、既存制度下で発送電を地域独占する電力会社のことだ。自然エネの普及策を検討する際に、発送電を分離する「電力自由化」の議論があった。しかし同法案は、既存電力会社の送配電網と料金徴収システムを前提とする。発送電分離に慎重な経産省の政策を踏襲するものだ。

最大の問題は買い取り価格だ。同法案では経産大臣が毎年価格を決める。さらに社会情勢を考慮して制度の3年ごと、さらに2020年度をめどに廃止を含めた見直しを行うとする。政府の裁量が働く余地が大きい。

ソフトバンクの孫正義社長の参入で注目された太陽光では、購入価格は現時点で示されていない。また風力、地熱、バイオマスでの買い取り価格をキロワットアワー当たり15-20円とする方針を経産省は示すが、これは採算ラインぎりぎりだ。

高い買い取り価格を事前に設定して自然エネルギーの導入を促したドイツや北欧とは制度の姿が異なり、価格を決める経産省が強い権限を持つことになる。

経産省はこれまで「電力料金が上昇する」と、この制度に反対の姿勢を貫いてきた。ところが、マニフェストで導入を主張した民主党への政権交代が確実になった2009年夏に突如方針を転換。

家庭、産業(事業者)での自然エネルギー発電による余剰電力買い取り制度を同年に導入した。発電事業者の大量参入が起こる全量買い取り制度の導入は渋ったものの、世論に押されて法案作成に動いた。しかし、法案の中に同省の意図を巧みに織り込んでいる。

法案成立の可能性は菅首相の退陣と絡み不透明だ。仮に成立しても普及が進むかは成立後の運用次第だ。その実現には国民の関与と監視が不可欠になる。(オルタナ編集部=石井孝明)

■同法導入を主張する菅直人首相のブログ
http://kanfullblog.kantei.go.jp/2011/06/20110616.html
■経産省による「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」の説明
http://www.meti.go.jp/press/20110311003/20110311003.html

2011年6月22日(水)11:31

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