東電、顧客を通じて取材規制?

先日、大手電機メーカーの新型施設を取材したとき、「事前に原稿を見せてもらえないのなら、お見せできない設備があります」といわれた。開かれたイメージがある企業だけに、珍しいことを言うと思い理由を尋ねると、その設備が東京電力製で、東電から「オルタナ記者の書いた原稿を掲載前に弊社に見せることが、(当社の販売した設備に関して)撮影取材に応じても良い条件だといわれた」のだという。

報道機関の場合、掲載前の原稿を取材先に見せることは原則的に行わない。取材先がそのように言ってくる理由はさまざまだが、それに応じてしまうと時として都合の良いように内容を修正され、記事の中立性が保てなくなるためだ。

だから、原稿を見せてもらうことが取材に応じる条件と取材先にいわれたら、取材をしないか、それでも取材する必要があれば、原稿を見せなくても良いよう粘り強く交渉することになる。

ただ今回は、取材拒否の理由が取材先の都合ではなく、そこに納入された設備の製造元からいわれたということで非常に珍しいケース。つまり、顧客を介して取材規制をしていることになるからだ。この電機メーカーの担当者も「せっかくの機会なのでお見せしたかったのですが・・・」と困惑気味だった。

ちなみにこの設備は、東電ともう一社による共同開発製品で、2003年から200カ所以上に納入されている。注目の省エネ製品でこそあれ、一般に隠すようなものではまったくない。それがなぜ、事前検閲のようなことを要求するのか。

改めて東京電力総務部に事実関係を確認すると、次のような答えが返ってきた。

「営業担当者によると、原稿を見せてもらえるなら見せて欲しいということを言いたかったようです。それによって取材を規制するつもりはありませんでした」

どうして原稿を見せて欲しかったのだろう。

それが東電の体質なのか。それとも福島原発の事故以降、単にナーバスになっているだけなのか。後者であると思いたいが、だとしても事前検閲のようなことは頂けない。少し考えれば、ますますメディアを敵に回すだけだと分かるはずだ。

事故後の一連の対応を巡って、記者の間では「東電の情報隠し」などと盛んにいわれている。適切なメディア対応を進言できるアドバイザーは、東電にいないのだろうか?(形山 昌由)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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