もんじゅ、存廃めぐる動きが活発化

「優れた技術 確かな安全」をうたう原研・敦賀本部のホームページ

相次ぐトラブルで長期間の運転停止を余儀なくされている高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)だが、日本原子力研究開発機構(原研)は24日、外部有識者による検討委員会を開き、復旧作業の着手を了承した。もんじゅについては菅直人首相が8日、「廃炉を含めて検討すべき」と国会で答弁したばかり。菅首相の退陣が秒読みを迎える中、もんじゅの存廃をめぐる動きが活発化している。

1995年のナトリウム漏れ事故から停止していたもんじゅは、2010年5月にようやく運転を再開。しかし復旧してわずか3か月後の8月、今度は燃料交換装置が炉内に落下する事故が発生。再び運転を停止し、今年6月に落下した装置の引き抜き作業を終えた。原研では来週にも復旧作業に着手したいとしており、元の状態に戻るのは順調にいけば10月頃とみられる。

もんじゅの運転は青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場と並び、日本の核燃料サイクルの実現に向けた重要なステップとされる。しかしもんじゅだけで既に2兆4千億円も注ぎ込んでいるにもかかわらず、再処理工場とともに度重なるトラブルで計画は大幅に遅延し、実現の見通しは立てられない状態だ。

加えて、東京電力福島第一原発事故を受け、菅首相は歴代政権の中で初めて脱原発依存とともにもんじゅの見直しを言及。しかも15日には、原発を推進するとした現行のエネルギー基本計画を白紙から見直すことを政府が閣議決定した。

もんじゅを統括してきた原研が、これまでの一連の動きに焦りと危機感を深めていたのは想像に難くない。今回の復旧作業の了承は、菅政権の退陣を見据えての、もんじゅ存続に向けた「巻き返し」とみることもできる。

市民グループ「ストップ・ザ・もんじゅ」の池島芙紀子代表は「廃炉が閣議決定でない以上、政府は運転再開に向け作業を粛々と進めるだろう」と指摘する。一方で、公明党の斉藤鉄夫幹事長代行が24日、もんじゅの廃炉も視野に党内で議論していると語ったことを受けて「社民党、共産党、みんなの党に続き公明党も見直しを表明した。包囲網が広がっている」と期待を示した。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年8月25日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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