想定外の津波で、原子炉冷却不可能に−東電自社中間報告書

東京電力本社

東京電力は2日、福島第一原発の事故調査に関する社内調査委員会の中間報告書を公表した。法令や国の指導に基づいて安全対策を施し、過酷事故に備えたが、想定を超える津波に襲われて事故が起きたと結論づけた。しかし同報告は社内調査による「自己弁護色」が強いと、批判が続出。東電の「甘さ」が問われそうだ。

■「自己弁護」、批判続出

同報告書は役員など幹部で構成する社内委員会が、計測されたデータや運転員ら250人以上の聞き取りをもとに作成した。国の原子力事故調査委員会とは無関係という。

東電は今回、矢川元基東京大名誉教授ら外部の専門家による検証委員会を設置し、調査内容について意見を聞いた。

外部の委員会は「事故の直接の原因は未曽有の津波だが、アクシデントマネジメント(過酷事故対策)を含むハード面、ソフト面での事前の安全対策が十分でなかった」としており、「過酷事故が起こり得ないという『安全神話』から抜け出せなかったことが背景にある」と指摘した。

しかし、この報告には批判が続出。3日付の東京新聞では、『反省なく自己弁護満載』と酷評。

同日の毎日新聞は『130ページ中、「結果として」「結果的に」との文言を計25カ所多用し「原因は想定外の津波」と従来の見解を繰り返した。

信頼回復には情報公開に徹し、責任の所在を明らかにするのが大前提だが、自己弁護に走るようでは、その道のりはほど遠い』と指摘した。

■なぜ水素爆発を放置? 不明さ残る報告

今回の地震の揺れは想定の範囲内で、確認した範囲では地震そのもの揺れによる安全上重要な機器の損傷はないとした。

一方、津波は想定を大きく超えてしまった。浸水高は1~4号機側で平均潮位から11・5~15・5メートル上、5、6号機側で同13~14・5メートル上だった。事前の想定では、津波の水位は最大で同5・4~5・7メートル上と評価していた。

その結果、津波によって冷却装置の非常用発電機は6号機の1台を除きすべて破損。原子炉が冷却できなくなり、1~3号機で炉心損傷が起きた。さらに原子炉建屋で水素爆発も起こった。

また報告書では、機器の故障を想定して複数の非常用冷却設備を設置するなどの事前の対策が国の安全審査に適合していたことを強調。

過酷事故への対応策も「国と一体になって整備を進めた」と記しており、事故の責任は国にもあることをにじませた。しかし水素爆発への対応をしなかった経緯、津波の想定が低すぎた点などは記述と説明がなく、事故原因は不明のままだ。

(オルタナ編集部=石井孝明)

東京電力ホームページ 中間報告書の公表について

 

 

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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