若手が描くコミュニティの未来とは=3月にイベント「Tokyo Community Crossing」開催=

東日本大震災からそろそろ1年。働き盛りの若手世代が、防災やエコ、地域コミュニティを切り口に、これからの自治について考え、発言するイベント「Tokyo Community Crossing(トーキョー・コミュニティ・クロッシング、TCC)」が3月17日(土)、東京都内で開かれる。未曾有の大災害を経験した私たちにとって、心地良く毎日を過ごせて、かつ万が一の時にも安心できる暮らし方とは一体どのようなものなのか―。イベントを主催するNPO法人GoodDay代表・荒昌史さんと、企画協力したgreenz.jp編集長・兼松佳宏さんに聞いた。(聞き手:オルタナ副編集長・木村麻紀)

「エコ」から「コミュニティ」へ

―なぜこのようなイベントを企画したのか。

荒:前職の不動産会社でCSRを担当していた頃から、集合住宅のコミュニティのあり方について考えていた。集合住宅では環境への配慮という形でエコは当たり前になってきたが、ライフスタイルが変わらない社会の現状がもどかしかった。最近は「シェア」や「半農半X(エックス)」(農業と自分の好きな何かを仕事にするライフスタイル)が注目されているが、いずれも近所の人と人が仲良くなければできないこと。これからは、エコからコミュニティづくりに重要度がシフトしていくのではないかと思っていた。そんな矢先に大震災に遭遇し、コミュニティの大切さを確信した。

あの日、停電や帰宅困難などを通じて、身近な人たちや地域の中で命を守り合うことの大切さを、首都圏に住む僕たちは疑似体験したはず。あのときのことを忘れたくない。その上で、防災を切り口にこれからのコミュニティをどうつくっていくのか、担い手になる働き盛りの若手世代を中心に多世代で考えていきたいと思って企画した。

兼松:これまでは、生き延びることに関わる事柄をお金で買って済ませられたかもしれないけれども、これからは人と人とがつながることで安心できる「心のセーフティーネット」があったほうが良いと気づいた人が増えていると思う。自分として何があれば安心して生きられるかということは、一人ひとりが見つめて選択すべき相対的なもの。お金ではないセーフティーネットのあり方について僕も知りたいし、防災、自治というテーマはそれを考える入り口になる。

―イベントの主な内容は。

荒:まずは自らを守るという観点で、防災教育に取り組むNPO法人プラス・アーツから、今後想定される首都圏地震についてレクチャーする。その上で、街の清掃活動プロジェクト「グリーンバード」副代表で港区区議会議員の横尾俊成さんからは防災と自治をテーマに、コミュニティデザイナーの山崎亮さんからは防災にもつながるコミュニティのあり方やつくり方をテーマにパネルトークをしてもらう。参加者同士のワークを通じて、「次は、自分の住む地域でこんなことをやってみよう!」というアイデアを引き出したい。

「住めば都」から「集まれば都」へ

―ところで、お2人はどのような地域コミュニティに住んでいるのか。

荒:僕は、都心のコーポラティブハウスに住んでいる。大震災の日はたまたま家にいたが、同じように家にいた人が、建物の状態や隣近所の安否を確認して特に問題なかったということを住民間のメーリングリストに流してくれたので、一晩家に帰れなかった人たちも安心できたようだ。計画停電に備えて、水やコンロをやり取りし合う人たちもいた。個人的には、こうした何気ないコミュニケーションがあったことで安心できた。

NPO法人GoodDay代表・荒昌史さん

兼松:僕は少し前まで都内にいた時、趣味や仕事内容が近い5、6組で同じ代々木公園に近い町内に住んでいた。ちょうどできたてのチャーハンが冷めないぐらいの距離(笑)。ツイッターで当日連絡を取り合って、誰かの家で一緒にご飯を食べたりして、何となく安心感があった。その後郊外の団地に引っ越したが、この町内に住む人たちは増えていると聞いている。その時の経験から思うのは、「住めば都」ではなく「集まれば都」なのだということ。今も東京ではないどこかへ引っ越したいと思っているが、その時には自分たちだけでなく友達も「誘致」したいと思っている(笑)。

荒:なるほど。必ずしも一つ屋根の下に住めば良いということではなく、同じ屋根の下に住んでいなくても、街ごとつながっていくほうが多様な人たちが集えるのかもしれない。

―単身世帯が3割を超えた今、同じ屋根の下に集うことだけではなく、同じ街の中でどのようなつながりをつくっていくかということも考えたい。

兼松:衣食住と言うぐらいだから、住む場所というのはその人の人生そのものとも言える。この街に住んでいる理由を尋ねることから始めて、共通の話題で対話ができれば、深いレベルの共感でつながれる可能性は十分あると思う。だから、地域でつながる人は最初から友達でなくても良いはず。

荒:「渋谷」や「横浜」と言うと広すぎるが、自分の住んでいる場所の町名にプライドが持てるのは素敵なことだと思う。首都圏だと建物の機能や利便性での違いはあまりないので、どのような街に住んで誰とつながってどんな学びや楽しみを得るのかという部分をデザインしていきたいと思う。

次に続く

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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