3割が「事実描ききれなかった」-震災報道で京大アンケート

今回の調査で困難な事態に最前線で直面した報道関係者の苦闘と思いが明らかになった

京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子准教授(社会心理学)らのチームは24日、報道関係者を対象におこなった「震災報道」についてのアンケート調査結果を公表した。

それによると、原発事故では客観報道を意識したものの、3割以上が「できあがった報道は事実を描ききれないところもあった」と反省する記者の姿が浮かび上がった。

アンケートは今年3月から4月にかけて、放送局や全国紙、地方紙、通信社などの記者個人や広報部に協力を依頼。ネットやメールを通して連絡のとれた115人の回答を分析した。

取材先や取材場所については、原発事故のみを取材した記者が17人、それ以外の被災地のみが19人、両方とも取材した記者が62人。具体的に原発事故では福島県内と東京都内が圧倒的で、取材対象も被災者や被災自治体のほか「政府や東電、福島原発」とする回答が多く、一線の記者が回答していることが裏付けられる。

取材姿勢に関して見ると「報道内容がポジティブ・ネガティブどちらかにも偏らないようにしていた」「専門家や一般人の意見は一定の方向には偏らないようにしていた」とする回答が、原発事故報道では60~75%にのぼった。また、所属する社の意見が含まれたかどうかについては「まったく含まれなかった」とする回答が原発事故でもそれ以外でも7割近くを占めた。

一方で、原発以外の被災地取材で「悲惨さを訴えようとした」記者は8割以上(「かなりあてはまる」と「ややあてはまる」の合計)に達し、原発事故で「読者・視聴者の不安を鎮めようとしていた」記者は3割超(同)で、「そうではなかった」記者の約2割を上回るなど、客観性や中立性の間で揺れ動くさまもみえる。

最終的に「あなたが関わった報道は、事実にかなり忠実なものになりましたか」という問いに「事実を描ききれないところがあった」とする回答が原発事故に関して34.3%、それ以外の報道について17.5%みられた。

内田准教授は「震災後1年というタイミングの調査だったが、現在進行形としての戸惑いや自問自答、そして使命感が表れる結果となった」とまとめている。(オルタナ編集委員=関口威人)

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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