国連気候変動ボン会議、各国間で「公平性」の考え方の違いが表面化

5月14日から25日まで開催された国連気候変動ボン会議

ドイツ・ボンで5月14日から25日まで、国連気候変動会議が開催された。「新しい国際枠組みを2015年までに合意する」ことを決めたダーバン合意を受けて、ダーバン・プラットフォーム作業部会(ADP)の初会合も開かれた。だが、CO2削減行動を巡っては各国間で「公平性」についての考え方の違いが浮き彫りになった。環境保護団体WWFジャパンの自然保護室気候変動・エネルギーグループリーダー山岸尚之氏に、現地からの報告を寄稿して頂いた。

■「議長・副議長」と「議題」での対立

ダーバンの合意では、2015年までに2020年以降の国際枠組みに合意することが決定され、その交渉のために設置されたのがADPでした。ADPの会合では、序盤からいきなり対立が生じました。対立点となったのは、議長の選出と議題です。前者も重要なことではありますが、特に後者はNGOの観点からは大きな問題でした。

ADPの当初議題案には2つの項目があり、1つは、今後、2015年までどのように議論を進めていくかということ。もう1つは、不充分であることがほぼ共通認識となりつつある世界各国の削減目標・行動の水準の引き上げ(「野心の水準の引き上げ」)について議論することでした。

後者の議題項目に対して、中国を中心として途上国から、反対が表明されたのです。議題案に反対をした国々の背景には、議論の場を次々と移してきた先進国に対する不信の念があったようです。

本来であれば、先進国の目標は、2005年から続いている京都議定書の作業部会(AWG KP)で作られるべきだったのが、2007年に設置された条約の作業部会(AWG LCA)へと議論の場を移し、途上国も「削減行動」をすることに。

WWFジャパンの自然保護室気候変動・エネルギーグループリーダー山岸尚之氏

さらに今度は、ADPの場に議論の場を移そうとしています。ADPでは、LCAまでは保持されていた先進国と途上国の区分が曖昧になり、全ての国が対象となって議論がされる可能性があります。最終的には、対策の遅れも含めて途上国に負担を押し付けようとしている、との懸念です。

こうした懸念にはそれなりの正当性があります。しかし、「野心の水準を引き上げる」という議題を失うわけにはきません(実際、島嶼国や後発開発途上国などは議題を支持していました)。また、反対の仕方も建設的ではない形であったため、中国はNGOから化石賞を受賞しました。

■「野心の水準の引き上げ」が議題、日本の意志問われる

議長および議題という2つの争点は、最終日になんとか採択されました。形は変わったものの、懸念だった「野心の水準の引き上げ」議題項目も含まれました。

2週間の会議の結果が「議長」と「議題」だけだというと、がっかりする面もありますが、他方で、今回の会議がすんなり行くとは誰も考えていませんでした。言ってみれば、今回の会議での対立は、これから始まる議論の中で必ず争点となる「公平性(equity)」についての考え方の違いが、早い段階で表面化してきたと言えます。

今回、日本があまり目立っていなかったのが、やや心配なところです。国連の場では、「野心の水準を引き上げ」議題を支持しつつ、他方では、国内で、現在の削減目標の引き下げが議論されているからです。

これから国連交渉では「野心の水準の引き上げ」が議題となります。日本の国内議論も、そのような国際的な文脈を踏まえて、議論がされるべきではないでしょうか。日本としての意志がこれから問われていきます。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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