カーボン・クレジット市場は課題多い船出に

記事のポイント


  1. 東京証券取引所が11日、カーボン・クレジット市場を開設した
  2. 西村経産相は「企業のGXへの取り組みを加速させる」と期待を示す
  3. しかしCO₂1トン当たりの価格がネットゼロ水準と比べ安いなど課題も

東京証券取引所は11日、カーボン・クレジット市場を開設した。初日は3689トンの売買が成立した。西村康稔経産相は今回の市場開設について「企業のGXへの取り組みを加速させる」と期待を示した。ただ、取引価格は2050年のカーボンネットゼロに向け国際機関が試算した炭素価格を大きく下回るなど、クレジット市場としては課題が多いようだ。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

カーボン・クレジット市場が11日から取引を開始した

クレジットの種類は排出量の削減方法によって「省エネ」「再エネ(電力)」「再エネ(熱)」「森林」などに分かれる。排出量1トン(CO₂換算)単位で取引する。初日に売買が成立したのは3600トンだった。そのうち再エネ(電力)が大半の3562トンを占めた。再エネ(電力)の価格推移は高値が3169円(1トン)、安値は3060円で終値も同額となった。

ほかに同日売買が成立した銘柄では、森林が高値9900円・安値7000円、再エネ(熱)が2480円、J-VER(未移行)森林が8450円、省エネルギー(売買高1トン)は2850円と基準価額と同額で取引を終えた。

西村経産相は「脱炭素投資の予見性を高め、企業のGXに向けた取り組みを加速させる」と期待を示した。日本取引所グループの山道裕己CEOは「政府の排出量取引の進展に合わせて、カーボン・クレジット市場を盛り上げたい」と意欲を示す。

その一方で、今回の市場開設は2050ネットゼロの実現には課題が山積する。

たとえばCO₂1トン当たりの価格設定だ。IEA(国際エネルギー機関)はネットゼロに向けて、2030年までに先進国のCO₂1トン当たりの価格を130ドル(約1万9000円)に試算している。カーボン・クレジット市場で取引する14銘柄はいずれもこの水準には至っていない。

炭素税のトンあたりの価格でも差が見られる。地球温暖化対策税はトンあたり289円だ。スウェーデンの117ユーロ(約1万8000円)やフランス(45ユーロ=約7000円)など国際水準とは大きくかい離する。

2028年度には「炭素に対する賦課金」を導入する予定だが、NGOなどからは「遅すぎる」との批判もある。

東証のカーボン・クレジット市場には9月19日現在、188の企業と団体が参加する。(東京証券取引所「カーボン・クレジット市場参加者一覧」

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #脱炭素

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