記事のポイント
- IEA「10年以内に石油などの需要が減少に」と予想、原因のひとつにヒートポンプの台頭
- ヒートポンプ台頭の理由はエネルギー効率の高さと、欧州の天然ガス離れ
- ヒートポンプを世界で導入すればGHG排出削減量は欧州の車の排出量に匹敵
ヒートポンプへの需要が世界で急速に高まっている。IEAは、このヒートポンプの台頭やその他の理由によって10年以内に石油や天然ガスなどへの需要が減少に転じると予想する。ヒートポンプ台頭の背景にはエネルギー効率が圧倒的に高いこと、ロシアのウクライナ侵攻による欧州の天然ガス離れが挙がる。IEAは、ヒートポンプが世界で導入された場合のGHG排出削減量は、欧州の自動車の年間の排出量である5億トンに匹敵すると見込む。オルタナ客員論説委員の財部明郎氏がヒートポンプの構造や、エネルギー効率について解説する。

■いよいよオイルピーク到来か
オイルピークというのは人類が石油を掘りつくしてしまい、石油生産量が増産から減産に転じることだ。
国際エネルギー機関(IEA)は年次報告書「2023年版世界エネルギー見通し」の中で、化石燃料生産量は10年以内にピークを迎えると予測している。いよいよオイルピークが到来するのだろうか。
しかしながら、今回のピーク予測は従来のオイルピークとは違う。石油資源を掘りつくしたために起こるものではなく、石油の需要が減少することによって、石油の減産が余儀なくされるのだ。
つまり資源はまだあるのに、需要が減るため減産となって行くから生産量がピークとなる。
そして、このピークは石油だけではない。石炭も、天然ガスも、化石燃料全体がこれから10年以内に生産量のピークを迎えるとIEAでは予測しているのだ。
IEAは特に欧州の天然ガスの需要減少について言及している。この原因は再生可能エネルギーが増加してくること。ロシアのウクライナ侵攻によって欧州での天然ガス離れが進んでいること。そして、この二つの要因に加えてヒートポンプの台頭が指摘されている。
「ヒートポンプの台頭」?唐突にヒートポンプという言葉が出てきたが、これはどういうことだろう。ヒートポンプがなぜ、天然ガスの需要減にそれほど貢献するのか。これについて、説明したい。
この続きは⇒ 日本のヒートポンプ技術が世界を救う