記事のポイント
- NPO団体がケージフリーで飼育する国内の鶏の割合は1.11%だと公表した
- 日本にはケージフリーで飼育する鶏の割合に関する公式なデータはなかった
- 「1.11%」というこの割合をどう見るべきか
NPO法人アニマルライツセンターはこのほど、ケージフリーで飼育する国内の鶏の割合は1.11%だと公表した。日本には、ケージフリーで飼育する鶏の割合を明らかにした公式なデータはない。この割合をどう見るか。(NPO法人アニマルライツセンター代表理事/オルタナ客員論説委員=岡田 千尋)
米国やヨーロッパ諸国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどには、ケージフリーで飼育した鶏の公式なデータが存在する。米農務省(USDA)は10月11日、2023年6月時点でケージに閉じ込められていない鶏の割合は38%に及ぶと公表した。
一方、日本はどうか。政府は国際鶏卵委員会が発表した農場の割合を使うが、これは正確性を欠くデータだ。現状を把握できないため、改善策を導き出すことが難しい。そもそも国はアニマルウェルフェアを改善しようと思っているのか。
■「アニマルウェルフェアは社会の持続可能性に欠かせない」
アニマルウェルフェアを高めていくことは社会の持続可能性に深くかかわっている。アニマルライツセンターでは2023年夏に、ケージフリーで飼育をしていると確認される養鶏場に対し、電話での聞き取り調査を行った。
インターネット上の公開データを加え、日本でケージに閉じ込められていない採卵鶏(正確には産卵中の成鶏)の数を割り出した。
その結果、国内のケージフリー飼育の鶏の割合は、「1.11%」であることが分かった。これまで、1%にも満たないと試算していたため、その認識からするとケージフリー飼育の割合は増加している。
実際に1000羽以上飼育する養鶏場の場合は、羽数を増やす傾向にあり、万単位で増えている養鶏場もあった。思い切ってケージ飼育をやめ、すべてを平飼い飼育に切り替えた養鶏場もあった。
■欧州や米国では半数以上がケージフリーに
この数字をどう捉えるべきか。1.11%という割合は、明らかに日本のアニマルウェルフェアの遅れを表している。
欧州や米国、オーストラリアなどは飼育する半数以上の鶏がケージフリーに切り替わっている。アジアでも韓国は4.6%(公式データから)、インド22%、インドネシア12%だ。
日本国内のみに絞って評価をすれば、「1%もあるの?」と思っていたよりも多いと感じて驚く企業もあるだろう。平飼い卵の調達に苦労している企業の体感としてはもっと少ないと感じているのかもしれない。
しかし、この1.11%はどう考えても世界最低レベルだ。日本はまさにアニマルウェルフェアのスタート地点にようやく立ったといったところだろう。
98.89%の鶏たちが極限状態で苦しんでいる。98.89%の鶏たちをすべて、ケージから解放しなくてはならない。世界と同様に。