スウェーデンの研究者、EV電池からアルミやリチウムを回収

記事のポイント


  1. スウェーデンの研究者がEV用電池からアルミやリチウムを回収した
  2. EV用電池リサイクルではアルミ除去時に他の原材料を損傷させるのが課題だった
  3. シュウ酸を活用した回収でニッケルやコバルトなどの損傷を最小限に

スウェーデンの研究者グループがEVバッテリーからアルミニウムを100%、リチウムも98%を回収することに成功した。回収にはシュウ酸を活用した。EVバッテリーのリサイクルには、アルミを除去する際に他の原材料が損傷することが課題だった。今回の研究結果では、ニッケルやコバルトなどの損失を最小限に抑えることができた。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

スウェーデンの研究者グループがシュウ酸を活用してEVバッテリーからアルミニウムとリチウムの回収に成功した

EVバッテリーからアルミニウムとリチウムの回収に成功したのは、スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者グループだ。これと同時に、ニッケルやコバルト、マンガンなどの原材料の損失を最小限にした。

回収には様々な植物に含まれるシュウ酸を使用した。有害であったり、高価な化学物質は使用していないという。

回収過程はバッテリーセルを砕いて、液体のシュウ酸で溶解する。一定時間が経過してから黒色の混合物をろ過すると、アルミニウムとリチウムが液体となり、コバルトやニッケル、マンガンなどは固形物として抽出される。

従来のリサイクル手法では無機酸でEVバッテリーの金属を溶解した後、アルミニウムや銅のような「不純物」を取り除く必要がある。それでも残留するアルミや銅を取り除くために、電気分解や化学処理で精錬するが、この際にリチウムが損失することがある。

今回の研究グループの方法では、不純物である「アルミニウム」を最初に改修することで、その後の行程で他の金属の損失を防ぐ。

研究グループの担当者マルティナ・ペトラニコワ氏はオルタナの取材に対して、「シュウ酸を使用する研究者は他にも多くいるが、今回の実験に成功したレア・ルーケット氏はアルミとリチウムだけを回収する方法に初めて成功しました」と話した。

次のステップは、液体となったアルミニウムとリチウムを分離することだ。「完全に分離し、高純度のリチウムを確保するための手段を見つけている」と展望を述べた。

■日本はNEDOがバッテリーリサイクル技術の研究開発に取り組む

日本においては、NEDOがグリーンイノベーション基金事業の一環で、リサイクル技術の研究開発に取り組む。リサイクル技術のポイントは、目的となる金属の回収率向上と、回収工程におけるコスト低減や環境負荷を抑えた技術を開発・実装していくことになる。

NEDOの担当者は「廃電池処理の段階でも、ニッケルやコバルト、リチウムなどのロスがある。そのロスを極力なくして、次の工程が容易になるよう得られた原料の前処理や品質改善を行うこと、リサイクルプロセス自体の低CO2化、低環境負荷で行うことが重要になる」と話す。

研究する技術には、熱処理によって金属分離をする「乾式処理」や、水溶液中処理による金属分離である「湿式処理」、「ダイレクトリサイクル」の3つある。ダイレクトリサイクルは廃電池から正極材などの電池材料として分離して再生する。これが実現するとリサイクル工程が簡略化できる。

2030年頃の実用化を目指して、研究開発を進める。

hagiwara-alterna

萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

執筆記事一覧
キーワード: #リサイクル

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..