記事のポイント
- 新型コロナウイルスの5類移行でアクリル板のリサイクルが課題に
- アクリルの大半が焼却処理され、リサイクル率は1割以下とみられる
- リサイクル技術や回収スキームが確立されていないことも足かせに
新型コロナウイルスがインフルエンザと同等の5類感染症に移行し、一部百貨店や飲食店でアクリル板を撤去する。撤去されたアクリル板の処理が課題となっている。アクリルの大半は焼却処理され、リサイクル率は1割に満たない。リサイクル技術や回収スキームが確立されていないことも足かせとなる。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
新型コロナウイルスの感染予防で多く流通したアクリル板のリサイクルが課題となる。
アクリルは感染予防のパーテーション以外にも、車のテールランプや建材、水槽など幅広い用途で使われる。ただ廃棄されるアクリルは、そのほとんどが焼却処理をされているのが実情だ。
一般社団法人プラスチック循環利用協会(東京・中央)が公表するプラスチックのマテリアルフロー図によれば、プラ廃棄物のうち25%が再生利用か、原料に戻すケミカルリサイクルされる。しかし、アクリルに限れば「リサイクル量は1割にも満たないだろう」(広報担当者)とみる。
アクリルの再生利用の例としては、装飾品にアップサイクルしたものなどがある。しかし再生利用例は限定的で、リサイクル率は低い割合にとどまる。
環境省や経産省は対策を進める。4月19日にプラスチック資源循環促進法にもとづく再資源化事業計画について初の認定を行った。認定を受けると、廃棄物を収集・運搬・処分する場合に必要となる業の許可が、計画の範囲内で不要となる。
3社の事業計画が認定され、そのうち1社は使用済みアクリル板を対象に年100トンを再資源化し、再生アクリルシートを製造する。
ケミカルリサイクルの技術開発も進む。
三菱ケミカルはアクリル樹脂のケミカルリサイクルの事業化に向けた実証を続ける。昨年12月に立ち上がったアクリルグッズ等再生利用促進協議会の発起人の1社となっている。同社が進めるケミカルリサイクル施設は24年度末までに稼働を開始し、年間処理量3000トンを予定する。
アクリル板の廃棄ラッシュが始まるなか、1割以下のリサイクル率を上げていくことが急務だ。