記事のポイント
- 企業のサステナ報告基準を定めるGRIのCEOが初来日した
- CEOは、複数あるサステナ報告基準との関係を「コインの表裏」と説明する
- 「企業の負担軽減に向け、低コストで簡便な報告環境を整える」と約束した
企業のサステナビリティ報告基準を定めるNPO団体・GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)のエルコ・ファン・デル・エンデンCEO(最高経営責任者)が10月、初来日した。企業のサステナ情報は、各国で開示の義務化に向けた動きがある中、報告基準が複数あり、企業側の負担が増している。CEOは、複数の報告基準の違いを「コインの表裏」の関係と説明した上で、負担軽減に向けて、低コストで簡便な報告環境を整えると表明した。(オルタナ編集部・北村佳代子、吉田広子)
オルタナは10月18日、GRIのエルコ・ファン・デル・エンデンCEOにインタビューを実施した。
サステナビリティ報告基準の策定には現状、4大プレーヤーがいる。米SEC(証券取引委員会)、欧州EFRAG(財務報告諮問グループ)、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)、GRIだ。ISSBとGRIは、SECやEFRAGと異なり、地域限定ではなくグローバルの基準だ。
この中で最も「老舗」にあたるのがGRIだ。GRIの普及率を見ると、世界の大手企業の中でサステナ報告にGRIを利用する比率は78%、GRIスタンダードを利用して報告書を発行した企業の数は1万1000社を超える。
GRIによると、日本でも企業のサステナ報告の80%がGRIを利用しているという。そのうち、約3割が、「参照」よりも厳格な「準拠」の形をとる。
世界でのGRI利用率は、北米・中南米が75%、欧州が68%、中東・アフリカが62%と日本の方が普及率は高い。しかしアジアを見ると、韓国の100%を筆頭に、シンガポール(98%)や台湾(96%)などでより普及が進む。
GRIのエルコ・ファン・デル・エンデンCEOは、インタビューに先立つ10月17日に、一般財団法人国際開発センターが主催した講演会「サステナビリティ報告の未来」の冒頭で、以下のように力説した。
「ISSBやEFRAGなどの他の基準も含め、私は本日、企業が各国の規制にも準拠した形でサステナ情報開示を低コストでかつ簡便に行えるよう、私たち自身も取り組んでいること約束する」
■ISSBとGRIは「コインの表裏のような相互補完的関係」
■GRI、欧州でのサステナ報告規制と相互運用に
■サステナ報告には今後、第三者保証が必要に
■統合報告書やサスレポ向け「GRIサービスマーク」も提供
■中小企業も公共機関も、サステナ情報の説明責任がある
■社内での非財務情報収集は、財務と同様のプロセスで