「サーキュラーエコノミー」が人と人との絆を取り戻す

記事のポイント


  1. 欧州を中心に、日本でもサーキュラーエコノミーへの関心が高まっている
  2. 細田衛士氏は「資本主義の『バラ色の考え』は静脈経済に当てはまらない」
  3. サーキュラーエコノミーは新たな資本主義を予感させるとする

■資本主義の「バラ色の考え」、静脈経済に当てはまらない

経済学の始祖アダム・スミスは、経済主体の利己的な動機に基づく行動が市場を通じて人々を経済的に幸福な状態に導くことを明らかにした。他人の幸せを考えて行動するわけでもないのに、各人が自己利益を追求するだけで、社会全体の、つまり他の人の幸せまでもがもたらされるという考え方は、資本主義を奉じる者にとって有り難い考え方だ。(東海大学副学長/政治経済学部教授・細田衛士)

こうした考え方は、現代の経済学にも受け継がれている。初級のミクロ経済学のテキストを開くと、「自分の効用を最大化する消費者と、自社の利潤を最大化する生産者が市場で出会い、取引することによって、効率的な資源配分が達成される」と書いてある。個々バラバラの行動が経済全体の調和を導くと言うわけだ。

しかし、競争市場に基づいた資本主義に対するバラ色の考え方は、動脈経済には原則当てはまるものの、静脈経済には当てはまらない。

静脈経済では「悪貨が良貨を駆逐する」可能性が大きく、不適正処理・不法投棄・不正輸出がまかり通ってしまう。また、生産者にとって、環境に配慮した設計・生産を行う動機付けはないため、廃棄物になりにくく、仮に廃棄物になってもリユース・リサイクルしやすい製品作りをすることはない。

つまり、静脈経済では、個々バラバラの意思決定が、経済全体にとってより良くなるような保証はどこにもないのだ。動脈経済システムをそのまま静脈経済に適用してもうまく機能しないのである。

(この続きは)
■「分断型社会システム」では高度な資源循環は望めない
■ サーキュラーエコノミーは新しい資本主義

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細田 衛士(東海大学副学長、政治経済学部教授)

東海大学副学長、政治経済学部教授。1953年生まれ。77年慶応義塾大学経済学部卒業後、同大学経済学部助手、助教授を経て、94年より教授。2001年から05年まで同大経済学部長を務めた。中央環境審議会委員や環境省政策評価委員会委員なども歴任した。

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