記事のポイント
- 英ヴァージン・アトランティック航空がSAF燃料100%で大西洋横断に成功した
- SAF100%で長距離飛行に成功した民間航空会社は世界初だ
- 農作物や廃棄された食用油などの混合物が燃料となった
英大手航空会社のヴァージン・アトランティック航空は11月29日、100%持続可能な航空燃料(SAF)を使い、ロンドンとニューヨーク間の飛行に成功した。SAF100%で大西洋を越える長距離飛行の成功は、民間航空会社として世界初だ。SAFには農作物や廃棄された食用油などの混合物が用いられた。(オルタナ編集部・北村佳代子)
11月28日に英ロンドンのヒースロー空港を離陸し、米ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に着陸したヴァージン・アトランティック航空100便(VA100)は、持続可能な航空燃料(SAF)のみで飛行した。
ヴァージン・アトランティック航空は、ボーイング社、ロールス・ロイス社、インペリアル・カレッジ・ロンドン、シェフィールド大学、ロッキーマウンテン研究所、ICFとともにコンソーシアムを組み、英・運輸省の資金援助の下、1年にわたって共同研究を進めてきた。
VA100便は、ボーイング787型機で、ロールス・ロイス社製のトレント1000エンジンを搭載する。
使用したSAFは、88%がAirBP社の供給するHEFA(加水分解エステルおよび脂肪酸)で、残り12%がマラソン・ペトロリアム社の子会社であるヴィレント社が供給したSAK(合成芳香族ケロシン)の、デュアルブレンド燃料だ。
HEFAは廃棄油から作られ、SAKは植物性糖類から作られている。
従来の石油ベースのジェット燃料をSAFに代替しても、飛行機から温室効果ガス(GHG)が排出されることには変わりない。
ヴァージン・アトランティック航空によると、廃棄物を主原料とするこの燃料は、従来のジェット燃料と同様の性能を保持しつつ、ライフサイクル全体では排出量を最大70%削減する効果があるという。
■SAFは輸送の脱炭素化のための中期的なソリューション
英国政府は、2030年までに航空燃料の10%をSAFにすることを義務付ける計画だ。また国際航空運送協会(IATA)は、2050年までの「ネット・ゼロ」達成を公約に掲げる。
現在、SAFが世界のジェット燃料に占める比率は0.1%に満たない。また、燃料基準においても、商用ジェットエンジンにSAFの混合が認められているのは50%までだ。
しかし、電化や水素技術の開発には数十年の時間を要すると考えられている中で、航空業界の脱炭素化や、2050年のネット・ゼロへの道筋に向けて、SAFは中期的に使用可能なソリューションとして重要な役割を果たす。
マーク・ハーパー英国運輸長官は、「SAF燃料を100%使用したこの歴史的なフライトは、輸送の脱炭素化と、乗客が好きな時に好きな場所で飛行機を利用し続けられる方法を示した」と声明を出し、「英国政府は、新興SAF産業での雇用の創出と経済成長を支え、“ジェット・ゼロ”の達成を今後も支援していく」と述べた。
■課題は「SAF」の供給量
■飛行機雲の研究も進める