「花粉症対策」も「脱炭素対策」も行き詰まる

記事のポイント


  1. 岸田首相は花粉症対策を打ち出し、今後10年でスギ人工林を2割減少する
  2. 10年後に植林するのは9割以上を無花粉・少花粉の苗木にする
  3. 一方、当事者である林業関係者は、一様に無理だと笑う

岸田首相が2023年5月に、花粉症対策を言い出した。そこで政府が打ち出したのは、スギ人工林を10年後に約2割減少させ、30年後に花粉の発生量を半減させることだ。具体的には、スギ林を毎年約7万ヘクタール(現在は約5万ヘクタール)皆伐し、また10年後に植林するのは9割以上を無花粉・少花粉の苗木にするとしている。(森林ジャーナリスト・田中淳夫)

あまりに唐突に出されたので、岸田首相の人気取り政策だろうともっぱらの評判だ。それに対して当事者となる林業関係者は、一様に無理だと笑っている。

そもそも林業従事者数は全国に4.4万人しかおらず減少が続いている。慢性的に人手不足であり、増やすのは至難の業だ。機械化も進んできたが、仮に大規模に高性能林業機械を導入してもオペレーターの養成には時間がかかる。

造林は今も手作業だから、伐採だけして放置される山が増えるだろう。伐採を増やせば増やしたで問題となりそうなのは、伐った木材の扱いである。

現在、資材価格の高騰で住宅建設が滞っており、木材価格は低迷している。将来的にも少子化の影響で着工件数の減少が加速するとされる。

つまり木材需要は減るのが必至なのに大量に市場に出荷されたら、在庫を増加させて木材価格を暴落させかねない。それが森林経営の意欲を奪い、廃業者を増やすだろう。

■2030年「46%減」目標に歯止めも

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

atsuotanaka

田中 淳夫(森林ジャーナリスト)

森林ジャーナリスト。1959年生まれ。主に森林・林業・山村をテーマに執筆活動を続ける。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)『鹿と日本人』(築地書館)『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(ともに新泉社)『獣害列島』(イースト新書)などがある。

執筆記事一覧
キーワード: #林業

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..