「欧州企業と人権(2)人権方針と研修」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(26)

人権に関するグローバル・ビジネス・イニシアチブ(GBI)のプログラムディレクターのサラ・レプチ氏は、「中間管理職やその他の従業員に真剣に人権についての取り組みを実施してもらうためには、CEOを含むトップレベルのマネジメントからの賛同を得ることが鍵となる。そして、トップマネジメントはただ単に賛同するだけではなく、自分の従業員に対してこの人権のトピックスを見せて聞かせることが重要だ」と話す。

世界最大の鉄鋼メーカーであるアルセロールミッタル社(本社:ルクセンブルク)の人権方針はCEO以下執行役員8人のコミットメントを表す署名を掲載し、企業としての人権への取り組みの真剣さをうまく伝えている。

人権方針を作成する際のポイントは次の5つだ。

1)企業の最上級レベルが関与し承認する
2)既存のコミットメントや方針を特定し、評価する
3)人権リスクマッピングの実施
4)プロセスに社内外のステークホルダーを関与させる
5)高水準の文献の参照、実践的な説明を含むことを考慮し、人権方針の声明を開発する

「国連ビジネスと人権に関する指導原則」によると、人権方針について、「適切な手段を通じて、企業トップから全ての部門にいたるまで定着するようにすべきである。さもなければ、各部門が人権に対する意識や考慮なしに行動することになりかねない」とある。つまり人権方針を定着させるための研修の重要性を訴えている。

■ 人権研修プログラムで意識向上を

GBIのレプチ氏は、「人権に関する研修は必須である。欧米でも、企業内部で人権という言葉自体話すことはないし、企業内で人権が何を意味するのかもよく知らない。GBIでは、毎日このような話と遭遇し驚いている。しかしこれが現実だ。人権という言葉を翻訳すること(分かり易く伝えること)は大切である。人々がいつも使用している言葉で人権を説明し、そして、新しいコンセプトとして適用することが必要だ」と話す。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..