ワタミファーム「牧草飼育の良さをアイスで伝えたい」

記事のポイント


  1. ワタミファームが「北海道美幌グラスフェッドアイス」を発売
  2. 同製品は、有機の牧草を食べて育った牛の生乳からつくられた
  3. なぜワタミはアニマルウェルフェア(動物福祉)にこだわるのか

サステナブル・セレクション 三つ星企業紹介

有機の牧草を食べて育った牛の生乳からできたワタミファームの「北海道美幌(びほろ)グラスフェッドアイス」。生クリームや卵、化学添加物は不使用で、牛乳本来の味を味わえる。なぜ同社はアニマルウェルフェア(動物福祉)にこだわるのか、白鳥新治・ワタミファーム営業マーケティング部長に聞いた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

牛たちは広大な牧場で牧草を食べてのびのびと暮らす

■ 牛の生態に合わせ放牧型で牧草飼育

――日本で飼育されている乳牛のほとんどは牛舎で暮らし、穀物飼料で飼育されています。ワタミファームの美幌(びほろ)峠牧場(北海道美幌町)では、牛たちは牧草を食べて過ごしているそうですね。どのような思いで「グラスフェッドアイス」を開発されたのでしょうか。

美幌峠牧場は、北海道北東部の美幌町にあります。約300ヘクタールほどの広大な牧場で約300頭の牛を飼育しています。牧場では、牛本来の生態に合わせて育てるために、牧草を有機栽培しながら、放牧型で飼育しています。雪が積もる冬は牛舎で育てます。

「グラスフェッド」とは牧草飼育という意味で、牧草を食べて育った牛から搾乳された生乳を「グラスフェッドミルク」と呼びます。しかし、生乳は、ほかの生乳と一緒に集められて、普通の牛乳として一般に売られてしまいます。

ですから、せっかく牛の健康に配慮して生産した生乳の良さを、何とかお客様に届けたいと思ったのです。その中でも、アイスにしたのは、生乳の美味しさを生かせることと、値段やサイズ、味など幅広く展開できるからでした。

製品化でこだわったのは、グラスフェッドミルクの美味しさを生かすことです。試作段階では、バニラエッセンスや生クリーム、卵などを入れて、いろいろと試してみました。バニラエッセンスは一滴入れるだけで風味が出ますし、生クリームや卵を入れるとコクが出ます。しかし、それでは生乳の味わいが隠れてしまうのです。

そこで、手を加えるよりは、グラスフェッドミルク本来の美味しさを追求して、最低限の原料だけを使うことに決めました。一方、原料がシンプルになると、味の幅が狭くなるので、味の組み立てには苦労しました。

――北海道のアイスと聞くと、濃厚なものを想像しますが、このグラスフェッドアイスは後味がとてもさっぱりしています。カロリーも普通のアイスの半分だそうですね。

ワタミファームの「美幌グラスフェッドアイス」

生クリームや卵を使わないことで、カロリーを抑えられました。原材料は厳選し、てんさい糖も塩も北海道産で、添加物は使っていません。塩はオホーツク産のもので、甘みを際立たせるために使っています。スイカに塩をかける食べ方と同じですね。

一般的には、アイスの食感のために増粘剤が使われます。その代わりに、私たちは寒天やこんにゃく粉を使って、全体をまとめています。

材料を最小限にして、グラスフェッドミルクの本来の美味しさにこだわったことで、商品のストーリーも明確になったと思います。

■ 動物福祉にこだわる理由とは

――美幌峠牧場の牛たちは、平均よりも2倍ほど長生きするそうですが、改めてなぜアニマルウェルフェア(動物福祉)にこだわるのでしょうか。

白鳥新治・ワタミファーム営業マーケティング部長

ワタミグループ全体の方針として、地球環境や生物多様性を守り、持続可能な循環型社会づくりを目指しています。2002年に有機農業をスタートし、現在は循環型の6次産業モデルを「ワタミモデル」と名付け、推進しています。

もともと美幌牧場は町営だったのですが、2018年から当社が酪農事業を行うことになりました。

牧場長の「牛たちと健康的に暮らしながら美味しいミルクを作りたい」という熱い思いがあり、広大な敷地を生かし、牛の生態に合わせた飼育をすることになりました。牛たちが狭い牛舎のなかで、常時つながれて過ごしているのは、やはり健康に良いとはいえません。美幌牧場では、1回あたりの搾乳量も抑えています。

牛は草食動物ですから、食事は穀物よりも牧草の方が良いですし、自由に歩いて適度に運動することも大切です。体調には常に気を配り、少しでも具合が悪そうだと、すぐに対応します。牛の健康管理に力を入れることで、病気になりにくくなりました。

体調維持のために、てんさい糖の搾りかすを牛に与えることもあります。牛糞は堆肥になりますし、循環型の酪農を進めています。

――牛の健康、人間の健康、地球環境の健康に配慮しているということですね。どのように広めていきますか。

「美幌グラスフェッドアイス」は2023年5月に発売し、間もなく1年が経とうとしています。ただ、まだまだ「グラスフェッド」も当社の商品も知らない人は多いだろうと思います。

現在、「美幌グラスフェッドアイス」は、ワタミオーガニックのオンラインショップやワタミグループの外食店舗、楽天市場、大手百貨店の産直ギフトなどで取り扱っていますが、より多くの人に手に取っていただけるように広めていきたいです。2023年12月からは、ピスタチオや有機紅はるかのフレーバーも増えました。

もし味わって頂く機会があるとすれば、その背景に、アニマルウェルフェアの考えや私たちが目指す姿を感じて頂けたら嬉しいです。

※ワタミファーム「美幌グラスフェッドアイス」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル・セレクション2023」の三つ星に選ばれました。「サステナブル・セレクション2024」の応募は、4月1日から受け付けます。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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