弁護士の山口利昭氏はブログで、夏坂カネボウ社長の「思い込みがまずかった、というのは後出しジャンケンの言訳であり、会社の構造的な欠陥を窓口担当者のミスにすり替えること。これでは再発を防止できるわけがない」と指摘した。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2013/07/post-65c9.html
コンプライアンスとは「法令遵守」ではない
山口氏はさらに「もし、最初に被害症例が報告されていた2011年ころから真摯に対応し、「被害のおそれがある」という段階で自主回収に出ていれば、多大な回収費用を必要とすることにはなるが、一番大切なブランドイメージの毀損は防ぐことができたのでは」と書いた。
企業ではよく「コンプライアンス」が叫ばれるが、これを単なる「法令遵守」と訳すと間違いが起きやすい。
新日本監査法人の大久保和孝・パートナー・CSR推進部長がオルタナ30号でのインタビューで指摘したように、「コンプライアンスとは単なる法令遵守ではなく、『組織が社会の要請に応えること』だ。
コンプライアンス(compliance)とは英語の comply の名詞形で、その原義は「相手を慮ること」である。
企業が応えるべき「社会の要請」とは、ステークホルダー・ダイアログなど「対話」を通じた社会的課題の抽出から、企業が提供する製品・サービスに対する不平不満、評価、応援、被害報告など多様な意見が混在する。ここから本当に危険な情報だけを抽出して対応するのは、確かに至難の業だろう。
前出の山口弁護士は「こういった苦情対応において、窓口担当者が「たいしたことではない」と思い込むのは通常の感覚であって、会社にとってマイナスの報告を窓口担当者が行うことを期待するほうがかなり無理があります」と指摘した。現場の力量に頼るのではなく、組織として危機予知の感度を上げる仕組みづくりが重要だ。
カネボウの親会社となった花王のお客様相談室では、顧客からのクレームに重大な要素があると判断された場合、役員全員の携帯電話に緊急メールが届く仕組みがある、と聞いたことがある。
「ポイント・オブ・ノー・リターン」は一回だけではない