記事のポイント
- 性差に起因する格差を世の中に問うブランドが増えてきた
- 課題の当事者から困りごとを聞き出し、「社会ニーズ」を見出す
- 社会の格差をビジネスの機会に変えるブランドを紹介する
性差に起因する格差を世の中に問うブランドが増えてきた。課題の当事者から困りごとを聞き出し、市場ニーズの先にある「社会ニーズ」を起点に製品を企画する。社会の格差をビジネスの機会に変える。(オルタナ副編集長=池田真隆)

「インクルーシブデザインでは、誰か一人のために開発した製品が、みんなにとって使いやすい製品になると信じている」。コクヨの井田幸男・CSV本部サステナビリティ推進室理事はそう言い切った。
オフィス用品などの開発を手掛ける同社は、昨年からインクルーシブデザインに力を入れる。SDGsのスローガンと同様、文字通り「誰も置き去りにしないデザイン」を指す。その起点は、働きづらさを抱える一人の当事者だ。
同社がこれまでに開発した製品を紹介する。淡いピンクやブルー、イエローなどの5色で展開する「USBメモリ」。色覚特性のある人でも識別しやすい色にこだわった。

段ボールでできた「封筒入れ」もある。一目でどこから開けるか分かりやすい設計で、力を入れずに切り取りやすいジッパーを付けた。上肢障がいのある人など、手を動かしづらい人にとって、使いやすさを追求した。

これらの製品の開発に当たり、同社は特例子会社コクヨKハートと連携した。コクヨKハートは、コクヨ製品のカタログやリーフレットなどのデザイン・印刷業務を行う会社だ。
従来は、コクヨが業務を発注していた。だが、インクルーシブデザインを確立させるため、共創を持ち掛けたのだ。
こうしてコクヨはインクルーシブデザインのプロセスを体系化した。そのプロセスは、① 社会のバリアを見つける② 解決方法のアイデアを検討する③ 試作品で検証する④ 具体的な商品やサービスで検証する――の4ステップだ。このアプローチを、「HOWS DESIGN(ハウズデザイン)」と名付けた。
いずれのプロセスでも核となるのが、当事者との「対話」だ。「困っている人がいるかもしれないという前提に立って、当事者と何度も話し合いを重ねるのがポイントだ」(井田理事)。未知の領域であるので、「失敗は付き物」と言い切る。
同社は2024年の新商品のうち、20%以上をハウズデザインで開発した商品にする目標を掲げる。
■実現性よりも「パーパス」示す
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