性差・障がいなど、当事者との対話で「社会ニーズ」見出す

記事のポイント


  1. 性差に起因する格差を世の中に問うブランドが増えてきた
  2. 課題の当事者から困りごとを聞き出し、「社会ニーズ」を見出す
  3. 社会の格差をビジネスの機会に変えるブランドを紹介する

性差に起因する格差を世の中に問うブランドが増えてきた。課題の当事者から困りごとを聞き出し、市場ニーズの先にある「社会ニーズ」を起点に製品を企画する。社会の格差をビジネスの機会に変える。(オルタナ副編集長=池田真隆)

コクヨはコクヨKハートの社員と話し合いインクルーシブな視点から製品開発を行う

「インクルーシブデザインでは、誰か一人のために開発した製品が、みんなにとって使いやすい製品になると信じている」。コクヨの井田幸男・CSV本部サステナビリティ推進室理事はそう言い切った。

オフィス用品などの開発を手掛ける同社は、昨年からインクルーシブデザインに力を入れる。SDGsのスローガンと同様、文字通り「誰も置き去りにしないデザイン」を指す。その起点は、働きづらさを抱える一人の当事者だ。

同社がこれまでに開発した製品を紹介する。淡いピンクやブルー、イエローなどの5色で展開する「USBメモリ」。色覚特性のある人でも識別しやすい色にこだわった。

USBメモリ スライド式(1個860円)

段ボールでできた「封筒入れ」もある。一目でどこから開けるか分かりやすい設計で、力を入れずに切り取りやすいジッパーを付けた。上肢障がいのある人など、手を動かしづらい人にとって、使いやすさを追求した。

取り出しやすい封筒(長形3号300枚入 3095円)

これらの製品の開発に当たり、同社は特例子会社コクヨKハートと連携した。コクヨKハートは、コクヨ製品のカタログやリーフレットなどのデザイン・印刷業務を行う会社だ。

従来は、コクヨが業務を発注していた。だが、インクルーシブデザインを確立させるため、共創を持ち掛けたのだ。

こうしてコクヨはインクルーシブデザインのプロセスを体系化した。そのプロセスは、① 社会のバリアを見つける② 解決方法のアイデアを検討する③ 試作品で検証する④ 具体的な商品やサービスで検証する――の4ステップだ。このアプローチを、「HOWS DESIGN(ハウズデザイン)」と名付けた。

いずれのプロセスでも核となるのが、当事者との「対話」だ。「困っている人がいるかもしれないという前提に立って、当事者と何度も話し合いを重ねるのがポイントだ」(井田理事)。未知の領域であるので、「失敗は付き物」と言い切る。

同社は2024年の新商品のうち、20%以上をハウズデザインで開発した商品にする目標を掲げる。

■実現性よりも「パーパス」示す
■生理痛を体験、辛さをヒントに
■性差医療の知見アプリで誰でも
■格差を見出し「性差」を問え

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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