BEVのLCA算定、「いばらの道だが避けては通れない」

記事のポイント


  1. BEVが「環境に優しい」と言うためには、一つの条件を満たす必要がある
  2. 調達から製造、消費、廃棄までLCA評価が欠かせない
  3. だが、BEVのLCAを正しく評価するためには信頼できるデータが求められる

「カーボン・ニュートラリティ」や「ゼロ・カーボン社会」など、二酸化炭素削減に向けたビジョンが各国から発出されているが、どれも抽象的な言い方なのでよく分からない。早い話しが二酸化炭素を減らすことが求められている。だが現実的には二酸化炭素だけでなく、他の温室効果ガスも減らすことが求められている。(自動車ジャーナリスト=清水 和夫)

自動車セクターでは欧州と中国では、バッテリー(B)を使って走る電気自動車(EV)の普及を急ぐ声が高まっている。両地域では各政府から膨大な補助金が用意され、BEVこそが環境問題解決の救世主政策のように報道された。

BEVは化石燃料を燃やすエンジンがないので「環境に優しい」と一般のユーザーは信じてしまった。だが、BEVが本当に環境に貢献できるのだろうか。BEVが環境に優しいと言えるのは、一つの条件を満たす必要がある。今回はその理由を明らかにしたい。

環境負荷を考えるとき、CO2はあらゆる場面で排出される。

例えば、クルマを作るために必要な材料とクルマ製造、さらにユーザーがクルマを使用するときの燃費(電費)、最後はリサイクルと廃棄までを貫く「クルマの一生」で環境負荷を評価する必要がある。こうした総合的な評価手法をLCA(ライフサイクル・アセスメント)と呼ぶ。

いままでのエンジン車の場合は100年以上も続く経験があるので、エビデンスからLCAが可能だが、BEVはそうはいかない。

リチウムイオンなどの資源を使うバッテリーのLCA評価は非常に複雑となり、確固たるエビデンスがないためにBEVのLCAは未知数だ。

■改ざん不可のデータ持てるか

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shimizukazuo

清水 和夫(自動車ジャーナリスト)

武蔵工業大学電子通信工学卒、1981年からプロのレースドライバーに転向、1988年本格的なジャーナリスト活動開始、日本自動車ジャーナリスト協会会員(AJAJ)、日本科学技術ジャーナリスト会議会員(JASTJ)、著書・共著に『クルマ安全学のすすめ』『燃料電池とはなにか』『ITSの思想』『ディーゼルこそが、地球を救う』などがある。

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キーワード: #脱炭素

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