記事のポイント
- 「食料・農業・農村基本法」の改正案が4月ごろに国会で論議される
- 今回の改正は、ウクライナ戦争によるに「食料安全保障」問題が背景にある
- 筆者は、「これから農業は誰が担うのか」を考える必要性を語る
■日本農業 常識と非常識の間(54)
農業の憲法といわれる「食料・農業・農村基本法」の改正案が2月に閣議決定され、4月ごろに国会で論議される。日本農業の近代化を目指した「農業基本法」(1961年施行)は、38年後の1999年に廃止され、代わりに「食料・農業・農村基本法」が成立した。
当時は、日本の経済力を背景に、「食料自給率を問題にするより、食料は輸入すれば良い」という、いわば「農業不要論」が強く言われた時代だった。特に米国の要求で、牛肉、オレンジの自由化を皮切りに、1993年には多国間通商交渉ウルグアイ・ラウンドでコメのミニマムアクセス(年間30万トンの輸入枠を設ける)の受け入れが合意された。
一方で、EUなどは、自国の農業を守るために、農業の環境貢献に焦点を当て、「価格支持制度」という価格補填の補助金制度から、「環境直接支払い」という新たな補助金制度に舵を切った。
今回の「食料・農業・農村基本法」の改正は、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵略に端を発している。実際、トウモロコシや小麦など穀物の国際価格の上昇、輸出国の輸出制限、ほとんど輸入に頼っていた化学肥料の大幅な価格上昇など、日本農業の根幹を揺るがし、その脆弱さが完全に露呈した。
そこで、「食料安全保障」問題がにわかに持ち上がった。
■有機農業を後押しするか