記事のポイント
- ホット・ブレッド・キッチンは、所得の低い移民女性の自立支援を行う
- 調理スキルを提供したり、フード関連ビジネスの創業支援を行ったりする
- ジェンダーや人種に関わらず多様な人を受け入れるのが特徴だ
ホット・ブレッド・キッチンは、所得の低い移民女性の自立支援を行う。クッキングスキルを提供したり、フード関連ビジネスの創業支援を行ったりする。ジェンダーや人種に関わらず多様な人を受け入れるのが特徴だ。(ニューヨーク=古市 裕子)
ホット・ブレッド・キッチンはニューヨークのチェルシーマーケットに拠点を構える。創業者のジャサミン・ウォルドマン・ロドリゲス氏は、2008年にこの団体を立ち上げた。
ブルックリンの自宅キッチンが創業の「場」だ。ジェンダー問題や人種差別の解決を目指し、移民女性向けに料理を教えることから始めた。
現在は、移民女性向けに調理スキルの研修を通して、創業・就職支援を行う。ニューヨーク市にある5つの行政区(マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランド)すべてで支援プログラムを展開している。
主にプログラムで教えるのは、調理スキルだ。調理スキルを習得した受講者を、ニューヨーク市内にある飲食関連企業に紹介する。就職ではなく、起業家志望の受講者には、事業立ち上げのノウハウを提供する。
このプログラムからコミュニティーも生まれた。受講者同士でビジネスに関する悩みを相談し合う。卒業生にも、継続して支援を行う。
これまでに1500人以上のキャリア支援を行ってきた。受講者たちはコミュニティーの中でビジネスパートナーを見つける。これまでに250の小規模なフードビジネスが生まれた。地域にもたらした経済効果は1億米ドルに及ぶ。
■理不尽な差別、保育にも
移民女性は、キャリアを築く上で、理不尽な差別に直面することが多い。人種によって受けることができる保育制度が制限されもする。コロナ禍では食品、接客業を中心に女性労働者が不当に解雇されたケースも相次いだ。
こうした中、移民女性と公正なパートナーシップを築く同団体を評価する声は多い。ニューヨーク市議会は、「多くのニューヨーカー、主に女性が自分の生活スケジュールに合わせて仕事を得られるようになった。女性の雇用と地域経済に効果をもたらした成功事例の一つだ」と評価した。
同団体会員のシャラビアさんは、「調理現場は男尊女卑が残っていると言われたが、だからこそ私は挑戦したいと思った。私は料理が得意でそのことに誇りを持っている。レシピも考案したい」と目を輝かせる。