記事のポイント
- ラリー・フィンク・ブラックロックCEOは投資家向け年次書簡を公表
- 資本市場の課題として「退職危機」と「エネルギーインフラ需要の高まり」と説いた
- 「エネルギーインフラ需要」には「エネルギー・プラグマティズム(実利主義)」を強調
ラリー・フィンク・ブラックロックCEOはこのほど、投資家向け年次書簡を公表した。資本市場の大きな課題は、退職積立金を持たない米国民が半数いる「退職危機」に加え、「エネルギーインフラに対する需要の高まり」だと訴えた。「エネルギーインフラ需要」には「エネルギー・プラグマティズム(実利主義)」の立場を強調した。(オルタナ総研フェロー・室井孝之)
「エネルギーインフラに対する需要の高まり」に関しては、インフラセクターには道路、橋、港湾、空港、携帯電話の基地局などがあるが、ブラックロック社が新規投資に対する最大の需要とみなすのは、エネルギーインフラだとした。
年次書簡によると、「多くの国が、エネルギー安全保障を達成しながら、低炭素の電力源に移行したいという2つの目標を持っているから」だ。
同社は脱炭素化とエネルギー安全保障について、「エネルギー・プラグマティズム(実利主義)」の立場である。世界は依然として、再生可能エネルギーも石油・ガスも両方を必要としているというスタンスだ。
同社は従来のエネルギー企業に3000億ドル以上を投資しており、2023年はグリーンエネルギーへの移行は避けられないとして、炭素回収技術で世界最大の直接空気回収施設となるSTRATOSプロジェクトに5億5000万ドルを投資した。施設建設は、テキサス州の大手石油会社であるオクシデンタル・ペトロリアム社だ。
同氏は「エネルギー市場は、石油・ガス生産者、新しいクリーン電力・気候テック企業に分かれている。オクシデンタルのような多くの企業は、この両方を行っており、これがブラックロックが従来のエネルギー企業からのダイベストメントを支持してこなかった大きな理由だ。彼らは脱炭素化のパイオニアでもある」と述べた。
■「退職後の貯蓄の構築は急務」とも警告